ジャイール・ボルソナロ次期大統領(社会自由党・PSL)は、閣僚職に現・元軍籍者を多く起用する事や、農牧畜系グループ、宗教系グループ、銃規制緩和推進系グループなど、政党にとらわれない枠組みで議会運営を行おうとしているが、その方針では、次期政権は不安定になるだろうと、3日付現地紙が報じている。
10月の統一選において、連邦下院の議席を多く獲得した主要15政党の内8政党は、政府の志向する経済政策に賛成するとの立場をとっているが、正式に政府を支える連立与党の立場を示しているのは、PSL(52議席)、民主党(DEM・29)、ブラジル労働党(PTB・10)の3党に過ぎない。これら3党の所有議席は合計しても91だ。
大統領選挙では敗れたが、下院の議席数では労働者党(PT)が56でトップだ。PTは、ブラジル社会党(PSB・32議席)、民主労働党(PDT・28)、連帯(SD・13)、自由と社会党(PSOL・10)と共に、合計139議席の野党ブロックを形成している。
「経済政策にはおおむね賛成だが、与党というわけではない」との姿勢を見せている政党には、民主運動(MDB・34議席)、社会民主党(PSD・34)、ブラジル共和党(PRB・30)、民主社会党(PSDB・29)、ポデモス(11)などがある。進歩党(PP・37)や共和党(PR・33)などは、態度を保留している。
経済政策にはおおむね賛成の5党と与党3党を合わせても230議席にしかならず、下院513議席の過半数257には及ばない。通常法案の承認は採決出席議員の過半数でよいが、憲法改正が必要となる社会保障制度改革の成立には、採決出席議員の数に関わらず、議席総数の60%以上、308票が必要だ。
ボルソナロ次期大統領は、選挙戦の最中から、「政党単位での議会の多数派工作はしない」としてきた。しかし、先週、オニキス・ロレンゾーニ次期官房長官(DEM)は、PR幹部のヴァルデマール・コスタ・ネット氏やMDB議員たちと会談した。ボルソナロ次期大統領は数日中にも、PRBやPSDBの代表者たちと会談する予定だ。
ロレンゾーニ氏は、「政府の方針に賛成する代わりに何か閣僚ポストを与えるような事をしなくても、320~350の協力勢力は確保できるはず」と語っているが、PPやPRからは、政権移行スタッフから閣僚職を与えられなかった事への、忸怩たる思いが漏れている。
また、メンバー刷新となった議会での主導権を握ろうと、第一党のPTや、第二党で大統領も出したPSLとはあえて距離をおいたブロックを形成しようとする動きが、各政党のリーダーたちから出ている。
下院議長選の行方は、これらのブロック形成にかかっている。