ジャイール・ボルソナロ次期大統領(社会自由党・PSL)は4日、社会保障制度改革は一度に行うのではなく、法案を段階的に提出し、それを順次、議会で承認させる意向だと発言したと、5日付現地各紙が報じている。
現テメル政権(民主運動・MDB)が立案し、委員会で承認を得たが、議会採決が棚上げされている改革案の一部(「年金が受給できる最低年齢の設定」や「それに男女で差をつける」などの内容)は、次期政権での改革にも利用でき、段階的改革の最初に来るだろうと、ボルソナロ次期大統領は語った。
議会で棚上げになっている改革案では、「年金受給開始年齢は、女性が53歳、男性は55歳でスタートするが、その後は段階的に引き上げていき、20年後には女性62歳、男性65歳とする」とされている。
「社会保障改革をやり切るための時間は4年間ある」との方針は、3日に、オニキス・ロレンゾーニ次期官房長官からも発せられていた。しかし、早急の社会保障改革を望む投資家筋は、不安をもってこの言葉を受け止めている。経済関係者たちの中には、「段階的な改革を目指す方が現実的」と理解を示すグループと、「段階的にやっている余裕はない」と批判するグループが存在している。
ボルソナロ氏は4日にブラジリアの政権移行チームの本部で、ブラジル共和党(PRB)やMDBの議員たちと会合を持った。同氏は昨年11月に発効となった改正労働法は修正の余地があるとし、「(改正で労働訴訟は減ったが)自分でビジネスを興し、従業員を雇う側に立つのはまだまだ大変だ」と語った。
議会が始まるのは2月からだが、実質的な審議が始まるのは3月からだから、議員たちは、来年上半期中の社会保障制度改革成立は困難だろうと見ている。
次期大統領は、「(政府負担を早く大幅に減らせるような)理想的な社会保障制度改革案を提出しても、議会で止まってしまえば、実利は得られない。まずは受給最低年齢の設定から始め、その後に〃既得権〃を攻めていく」とも語った。同氏が既得権の言葉を使う時は、民間企業の労働者よりも有利な制度で年金を受け取っている公務員の年金制度を指している。
次期政権の市民相に指名され、4日の会談にも出席したオズマル・テラ下議(MDB)は、次期大統領は「社会保障制度改革に触れ、支援も要請したが、踏み込んだ話はしなかった」と語った。
また、米国ワシントンのピーターセン研究所所属調査員のモニカ・デ・ボッレ氏は、「段階的に法案を出していけば、ボルソナロ政権はその都度、政治力を消耗する。議会との折衝に長けた人材の少ない政権にとっては、最悪の考えだ」との見解を示している。