1日に、G20首脳会議の首脳宣言で「保護主義と戦う」の文言が初めて削られたと聞き、自国第一主義台頭への危惧感を再び感じた▼自国第一主義台頭への警鐘は、第一次世界大戦終結100周年のマクロン仏大統領の演説でも鳴らされた。だが、11月17~18日開催のアジア太平洋経済協力会議で首脳宣言が出せず、今回のG20首脳宣言から「保護主義と戦う」の言葉が消えたのは、米国のトランプ大統領の意向が強く反映された出来事だ▼トランプ氏の自国第一主義が保護主義政策を生み、米中の貿易摩擦を引き起こした事は周知の事実だ。トランプ氏は自国経済や雇用を守るため、移民流入を防ぐための壁建設や、米国以外の国や地域で製造した品への高関税導入などを決めてきた。また、自国産業を守るため、地球温暖化抑制を目指すパリ協定からの離脱を宣言した唯一の国でもある▼だが、高関税は二大経済国間の貿易戦争を生み、米国企業が他国で製造した商品にも高関税を課す事で、当該企業の経営に影を落とす事態も招いた。米中の貿易摩擦は世界経済を減速化させ、米国が景気後退に陥る可能性も取り沙汰されているし、パリ協定離脱は国際的な信用を損ねた▼こうして考えてみると、自国第一主義、保護主義は、自分達の首を絞める結果を招くと言えまいか。昔のように経済活動の範囲が狭いなら別だが、現在の経済活動や地球温暖化対策は全地球規模で動いている。程度の差こそあれ、誰もが他者に依存しており、自国だけで全て賄える国はない。ボルソナロ次期大統領がアマゾン開発などのためにパリ協定離脱を示唆した事への不安が、単なる危惧で終わる事を願いたい。(み)