少子高齢化により介護人材不足が深刻化する日本――北海道上川郡東川町で、介護留学生向けに給付型奨学金制度が始まる。2年間介護を学んだ後、5年間指定の介護施設で勤務すれば、全額返済不要となる。国籍や年齢を問わず、N2相当の日本語能力が条件。だが現在はN3、4相当であっても、奨学金を受給しながら一年程度日本語を学んだうえ、介護科に進むことができる。町が責任を持って支援し、最長で3年間の授業料や生活費が全額免除されるという外国人にとってはメリットの多い制度だ。
旭川市に隣接し「写真の町」として知られる風光明媚な東川町は、人口およそ8300人。少子高齢化対策として外国人留学生誘致を推進してきた同町は、14年に町内の北工学園旭川福祉専門学校に日本語学科を開設。15年には全国初となる公立の東川日本語学校を開校するなど画期的な施策を講じてきた。現在、市人口の約4%が外国人で占められる。
16年法改正で在留資格に「介護」が追加され、国家資格取得を前提とした留学が認められるようになった。これを受けて、同町が近隣市町村と新設を進めているのが介護留学生向けの給付型奨学金制度だ。
これは北工学園の留学生が対象。日本語能力試験2級相当が条件で、国籍や年齢問わず。授業料と生活費含め年間250万円を支給し、2年間で国家資格取得を目指す。学生ビザでは週28時間のアルバイトが認められており、働きながら学ぶことが可能だ。
ただし、卒業後は近隣の指定福祉施設で5年間働くのが条件。とはいえ、その間も日本人職員と同等の給与が支給される(年収は約280~300万円)。ただし、退学や離職する場合は、返済義務が発生する。介護での在留資格は最長5年、更新可能だ。
なお、2022年迄は国家試験に落ちても、継続して働くことが可能。制度は移行期にあり、5年間勤続すれば自動的に国家資格を取得できるようになっているという。
またN3、4相当で、かつ一年間程度で介護科に進学が見込める場合には、同学園日本語科で一年間勉強できる。その間の授業料、生活費等も全て奨学金の対象。介護科での2年間の奨学金と合わせ、5年間の指定福祉施設での勤務により返済不要となる。
同学園では別途、1年半、2年の日本語コースを準備している。日本語レベル等により授業料は全額もしくは半額免除、寮費も半額免除される。N5レベルであればこちらのコースで学んだうえ、介護科に進むことも可。介護科進学を前提としない日本語留学でも、適応される措置だ。
制度案内のため来社した市川直樹副町長は「外国人にとって、日本のどこで働くかは難しい選択を迫られる時代。本制度はきちんと介護を学んでから仕事に進むことができ、市町村が全責任を負ってやっているという点に違いがある」と自信を伺わせる。
「日本でやっていくには、日本の習慣や文化、日本語を習得することが必要。その点、日系人が優位にあると考えている」と話し、「学生のなかには、介護先進国である日本で優れた技術を学び、帰国して会社を興したいという意欲的な学生もいる」という。
同学園の平戸繁事務局長も「現在、183人の留学生がいる。専門職として日本に在留してもよいし、日本での経験をブラジルに持ち帰る道など、様々な進路の選択肢を選んで頂きたい」と話す。ブラジルもいずれは高齢化する流れにあり、帰伯後に日本仕込みの介護技術を活かすことも夢ではなさそうだ。
問合せは、ブラジル北海道協会の馬場光男副会長(11・99940・2313、Eメール・sp-mbaba@yahoo.co.jp)まで。