10日、高等選挙裁判所(TSE)でジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)の大統領当選が確認され、認証状授与式が行われた。ボルソナロ氏は授与後の演説で「全国民のための大統領」になることを誓ったが、同時に国民の大意で選ばれたと強調することで、国民との直接的な意思の疎通を擁護し、従来型のメディアなどの介入を遠ざけるような言及も行った。11日付現地紙が報じている。
ボルソナロ氏は演説で「1月1日をもって、私は全国2億1千万人の大統領になる。私はブラジル人すべてにとって有益になるような国づくりを行う所存だ。それには社会的な立場や人種、性別、宗教の違いなどは関係ない」と言い切った。
この発言は、28年にわたる下院議員生活で、女性や黒人、LGBT、先住民への差別発言で知られた同氏のイメージとは異なるものだが、この発言の背景にはローザ・ウェベルTSE長官が、書類授与の際に行った演説があった。
ローザ長官はこの演説で、「選挙とは無記名で自由意志に基づいた国民の行為だ」「民主主義とは、主張がまるで違う人たちも受け入れ、忍耐をもって継続する対話に基づいたものでなくてはならない」「民主主義国家においては多数派も少数派もない。多数派の意向に沿わないことであっても、少数派の声に耳を傾けなくてはならない」などと語った。また、同長官は、認証式の日がちょうど、世界人権宣言が行われて70年の記念日であることも合わせて強調した。
ローザ長官の演説に対し、式に参列したボルソナロ氏支持派の政治家の一部からは、「ボルソナロ氏が歴史の授業を受けさせられ、辱められたようだ」「ボルソナロ氏に対して失礼で不必要だった」と不満の声もあがっていた。
ボルソナロ氏は、「国民のための大統領」を主張する一方、この同じ演説で「選挙で選ばれた大統領」であることを強調した。同氏は「世界的に不安定な世相の中で、民衆の声によって選ばれた大統領が世の流れを変えることができることを証明したい」と語った。
また、「国民の大意で当選したのだから、従来のような仲介手段は必要ない。インターネット社会は国民の声が反映されやすく、有権者と候補者の間が非常に密になった」と語った。ボルソナロ氏はテレビやラジオの政見放送でほとんど時間を与えられず、討論会にも出ない中、ネットの支持を中心に当選した。
他方、労働者党(PT)は10日、TSEに対し、大統領選挙時にボルソナロ氏が親しい企業を介して、対抗候補のフェルナンド・ハダジ氏に関するフェイクニュースをワッツアップで大量に流させたことによる当選無効を求めている。