テメル大統領は14日、70年代にイタリアでテロ事件を起こして逃亡中のチェーザレ・バティスティ氏(83)の国外追放に正式に調印した。これはかつて、ルーラ元大統領が出していた見解を覆すものとして注目されている。15日付現地紙が報じている。
これは、13日に最高裁のルイス・フクス判事がバティスティ氏の身柄拘束を命じたことを受けた判断だ。
イタリアの左翼の過激派グループに属していたバティスティ氏は、1977年と79年に計4度にわたる殺人事件を起こしている。この件をめぐり、1981年に12年10カ月の実刑判決をイタリアで下されたが、バティスティ氏は無実を主張し、まもなく国外逃亡を行った。その後、93年にもミラノ地裁が同氏に終身刑を言い渡している。
バティスティ氏は90年代は当時のミッテラン大統領の保護の下、フランスで逃亡生活を送っていたが、その保護が2002年に切れると、逃亡先をブラジルに変えた。同氏は07年にリオで逮捕されたが、当時のタルソ・ジェンロ法相が政治亡命を認めた。
この件は2010年に最高裁で話し合われ、政治的な理由で国外逃亡したものではないという理由で、国外追放ということでまとまった。だが、最終結論は当時のルーラ大統領に一任され、その任期最後の日に、テロ犯の逃亡継続を認めた。
フクス判事の判断は、イタリアがその後もバティスティ氏の身柄引渡しを再三願ったことや、ジャイール・ボルソナロ次期大統領の判断に委ねることを念頭において出されたものだ。ボルソナロ氏は大統領選の公約で、バティスティ氏の国外追放を明言していた。
だが、その前にテメル大統領が国外追放に了承の調印を行ったこと、さらに言えば、最高裁大法廷での判事の全体投票で決まると思われていた国外追放か否かの判断をフクス判事が独自に行ったことが驚きをもって迎えられている。この判断は、現在服役中のルーラ氏が行った判断が8年ぶりに見直しを求められたことを意味する。
バティスティ氏の国外追放に対しては、14日の内に、イーゴル・タマザウスカス氏、オタヴィオ・マジエイロ氏の2人の弁護士から、判断見直しを求める請求が出されている。
なお、バティスティ氏は4年前から、サンパウロ州海岸部のカナネイアに住んでいるが、この一カ月ほどは不在がちで、11日以降は行方不明になっているという。