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藤田大使ら先駆日系人映画に=パラナ連邦大学、岡本教授ら企画=110周年で19日に先行上映会

藤田エジムンド大使を描いた第1回の画面(提供写真)

藤田エジムンド大使を描いた第1回の画面(提供写真)

 日系人が余り進出してない分野で活躍する先駆的人物を取り上げるドキュメンタリー映画プロジェクト「Nipo―Brasileiro」の先行試写会が19日夜、サンパウロ市のブルーツリーホテルで開催され、関係者ら約90人が集まって第1話を鑑賞した。企画したのはマリア・リガヤ・アベレダ・藤田大使夫人(藤田エジムンド進氏の未亡人)、二宮正人USP教授、岡本モニカ・パラナ連邦大学教授らで製作はピエタ・プロダクション。各回12分ずつで、全8話。計17人が扱われる。

左から岡本教授、マリア・リガヤ・アベレダ・藤田大使夫人(提供写真)

左から岡本教授、マリア・リガヤ・アベレダ・藤田大使夫人(提供写真)

 当日の挨拶で藤田未亡人は「夫は2015年に二つのプロジェクトを持っていた。一つは『日伯修好120周年の本を出版すること』。夫が亡くなった後、2016年9月にこれは実際に刊行された。もう一つは、移民110周年を記念してブラジル社会における日系人進出を記録するドキュメンタリー映像だった。だが、こちらは夫が16年4月に亡くなってから宙に浮いていた。岡本先生が似た企画を持っていることを知り、お願いすると快く引き受けてくれ、もっと新世代に焦点を当てたものに変わった」と開始に至る経緯を説明した。だから第1話は藤田大使が主人公となった。
 さらに未亡人は「エジムンドは日本移民を受け入れてくれたブラジル国と国民を顕彰したかった。ただし、エリートの中にはブランキアメント(国民白人化)の発想から日本移民を制限しようとした人々もいた。この国は他民族、多文化国家であることをこの作品は証明している」と企画主旨を説明した。

製作に携わったパラナ連邦大学の学生(提供写真)

製作に携わったパラナ連邦大学の学生(提供写真)

 二宮氏は、「藤田大使とは1967年からの幼馴染み。彼は、周りから『将来は駐日本国大使』と思われていたし、本人も希望していたと思うが、PTに嫌われていてなれなかった。彼が日伯修好120周年を記念して出した本を現在、和訳しており、彼との思い出が蘇ってくる」との胸中を吐露した。
 続いて学生と共に企画を進めてきた岡本教授は、「日系人の進出は主に医者、弁護士、エンジニアが中心だった。藤田は人種の壁を越えて、初めて外務省に入った日系人。同じようにダンス、俳優、ジャーナリズム、文学、企業家など日系人が少ない分野における先駆的な人物に焦点を当てた。新年4月に全8話をサイト上で無料公開する予定。日本語、英語、スペイン語、韓国語、中国語の字幕もつける。その後、証言を本としてもまとめ刊行する」と今後の予定を語った。

左から中原アレシャンドレさん、知念ペドロさん、コスタ監督(提供写真)

左から中原アレシャンドレさん、知念ペドロさん、コスタ監督(提供写真)

 ジエゴ・コスタ監督によれば、製作期間は1年間。撮影し終わった10時間分の映像素材を9月から編集に入り、第1話が完成したので、移民110周年のタイミングでプレ公開することになったという。新年4月には全話をウェブドク方式のサイト上で公開する。これはドキュメンタリー映画を中心に、サイトに見に来た人がコメントを書き込んだり、関連した資料や写真をそこに置いたりできる形式のサイトだという。

第2話以降の登場人物の皆さん(提供写真)

第2話以降の登場人物の皆さん(提供写真)


□関連コラム□大耳小耳

 ドキュメンタリー映画プロジェクト「Nipo―Brasileiro」で登場する人物は次の通り。【第1話】藤田エジムンド進、【第2話】ヨシ・スズキ(ダンサー)、ベアトリス・サノ(同)、エドアルド・フクシマ(同)、【第3話】ジャナイナ・トキタカ(小説家)、オスカル・ナカザト(同)、【第4話】マユラ・オクラ(企業家)、グスターボ・タナカ(起業家)、【第5話】セシリア・イシタニ(外交官)、ユキエ・ワタナベ(同)、シルビア・モリモト(国連職員)、【第6話】セルソ・キンジョウ(ジャーナリスト)、レオナルド・サカモト(同)、【第7話】ロジェリオ・ナガイ(俳優)、ベアトリス・ジアフェリア(同)、【第8話】村野美恵(耳鼻咽頭科医師)、二宮正人(弁護士)。多彩な職業の人物が揃っており、完成が待ち遠しい?!
     ◎
 ジエゴ・コスタ監督(35)はリベルダーデ区の隣、カンブシ区在住で、「毎週東洋街に日本料理を食べに来ている」という日本びいき。「一般ブラジル人が持つ先入観、日系人といえばパステル屋、庭師という先入観を壊したい」と意気込む。製作助手する知念ペドロさんは沖縄県人会の日本語教室に通っていた経験があるという。「映画界にも日系人少ないから、登場人物に共感する」とのこと。知念さんと一緒に働く中原アレシャンドレさんも「とてもやりがいのあるプロジェクトだ」と腕まくりした。