今年もあと、もう数日で終わるが、それと同時にテメル政権も終了する。ただ、そのことに着目している人は、もう既にメディアでもかなり少ない▼思えば、この政権ほど地味で不人気な政権もなかった。元々が副大統領で、ジウマ政権崩壊の危機のタイミングで寝返り。法的な違法性こそないものの、「裏切り者」「労働者党(PT)よりも汚かったのはおまえたちの党(民主運動・MDB)」などと国民になじられ、「自分たちは副大統領などには投票をしていない」としてこの2年半強のあいだ、とにかく不人気だった。「支持率が10%に満たないことの方がほとんどだった」などという政権はほとんど聞いたことがない。大統領制でなく、議員内閣制の国であったならば、まず持ちこたえられはしなかっただろう▼だが、コラム子的には、テメル政権にはさほど悪印象はない。それは彼らに「プロフェッショナルな政治屋」という印象を抱いていたためだ▼MDBという政党自体にカリスマ性は全くなく、それが老舗政党ながら大統領を輩出できない要因にもなってはいた。さらに古くからの政党ということで伝統的に汚職体質。それが政界に悪影響を与え続けてもいる。だが、それでも、1985年の民政復帰後、いずれの政権も政権運営上、どうしても与党に加えざるを得ない政権であり続けている。それはなぜか。もちろん、議会運営上の「数合わせ」の要素もあるが、ブラジル政界で昔から言われるところの「金は取るが仕事はする」体質だから。ちゃんと法案を通すためのネゴシエーションはでき、さらに常識の範囲を超えることのない中道ゆえだ。だから、「極端におかしなことはしないだろう」と思えたのだ▼そうしたら、案の定、コラム子の読みは当たった。悪くなるばかりだった経済は、テメル氏が大統領に昇格した2016年を底として再び上昇。その間、テメル氏自身のスキャンダルで罷免の危機にも晒されながらも、古くからの政界らしい「なあなあさ」も見せ、それでもなんとか任期の最後まで生き延びた。本人の罷免危機に加え、JBSショックだの、トラック・ストだのの横槍も入り、目標としていた社会保障制度改革はできなかった。それでも結局のところは次期ボルソナロ政権にとって上向きなベクトルでバトンタッチできるような状況にまで整えた。ずばり、「仕事なら、ちゃんとした」と言える▼さらに言えば、大統領選の末期には、不人気度も高かったボルソナロ氏とフェルナンド・ハダジ氏の決選投票を嘆いた国民から「フィーカ(残って)、テメル」とまで呼ばれるようになっていた▼思えば、1992年に同じく罷免にあったコーロル大統領の後を継いだ副大統領も、テメル氏と同じくMDBのイタマール・フランコ氏で、同氏も次のカルドーゾ政権までの良い橋渡役となった。「カリスマ性のない職人政治家集団」はこういう危機的状況のときに強いのかもしれない。その点では、「政界の今後」に対する大言壮語な夢ばかり語って、軍人が閣僚の半数近くを占め、自身の政党の大半が政治素人のボルソナロ氏よりは安心して見ていられた▼ひとしごとを終えた後のテメル氏には今度は、大統領在任中には何とか逃れることのできた、汚職疑惑の捜査と裁判が待っている。そこで政治家として生きながらえることができるかどうかは不明だが、いずれにせよ、「それなりの再評価」は後からついてきそうな予感はする。(陽)