1日、大統領府でジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)の就任式が行われた。メディア関係者を悪待遇し、「ブラジルを社会主義から開放したい」という、大統領就任式らしからぬ就任挨拶を行うなど、選挙キャンペーンさながらの就任式となり、同時に国内外のマスコミからの批判も受けた。2日付現地紙が報じている。
ネット上で熱心な支持者層を築き上げて当選したボルソナロ氏だけに、大統領府前には、晴れの就任式を見ようとする熱心なファン11万5千人が集まった。その数は、大統領府側が見込んだ25万人には及ばなかったが、それでも、4年前のジウマ氏や、2003年のルーラ氏といった、同氏が敵対視する労働者党(PT)の大統領の就任式にかけつけた人よりは多かった。
就任式でボルソナロ氏は「ブラジルを差別や分裂のない国にする」と語ったが、その一方で「ブラジルの旗の色が(共産主義やPTの党イメージの)赤で染まることはない」として社会主義や共産主義を批判。さらに「国の価値や伝統、家族の価値観を揺るがすような社会主義が国民を分裂させ、社会を崩壊させるような事態は起こさせない」「犯罪者を罪から解放するようなイデオロギーと戦う」と言い切った。
この伏線には、PTと社会主義自由党(PSOL)の左派2党が大統領就任式への参加を拒否する声明を事前に出していたことがある。さらに、外務省がキューバやベネズエラの政府首脳にも就任式の招待状を送ったのに、ボルソナロ氏がキャンセルしたことも話題となっていた。就任式に参列した国際社会の政治家や首脳には左派側の人も少なくなかった。
だが、国内外のマスコミ関係者を朝早くから地下室に集め、移動や取材を制限したりするなどの悪待遇が、こういった態度に輪をかけ、「選挙期間中のモットーを繰り返した」(エスタード紙)「ブラジルの先進派が恐れている日が来た」(英ガーディアン紙)「極右主義に基づく変化で国が不安定になる」(仏フィガロ紙)などという批評が並んだ。同氏が推進しようとしている銃の解放や環境問題の軽視、先住民居住区の拡大拒否などの問題も、就任式の様子と共に報じられた。
そんな中、新大統領夫人のミシェレ氏が行った挨拶は好評を博した。大統領夫人がスピーチを行うこと自体が異例(初めて)であり、しかも、同夫人は手話を使い、隣で通訳が「選挙の際の国民の団結心に感謝する」など、夫人の意向をポルトガル語で伝えた。このスピーチは、社会的弱者に冷たいイメージのボルソナロ氏の印象を緩和する役目を果たした。
なお、ダッタフォーリャが12月に行った調査では「ボルソナロ政権でブラジル経済が良くなる」と答えた人は65%いたが、コーロル政権以降の大統領就任直前の数字としては最低だった。