ボルソナロ新政権の外相に就任したエルネスト・アラウージョ氏は2日、外相就任式の演説で、世界協調路線やグローバリズムよりも、先ずはブラジルの利益を優先する方針を発表したと、2、3日付現地各紙・サイトが報じた。
アラウージョ外相はこれまでの外交を、「輸出促進、国際投資呼び込みには熱心だが、その他の分野で主導権を握りにいく積極性に欠ける」と評した。
同外相は、「私たちはグローバリズムのためにではなく、ブラジルの国益のために働くのだ。ニューヨークタイムズよりジョゼ・デ・アレンカール(ブラジル人文学者・故人)、CNNよりラウール・セイシャス(ブラジル人ロックミュージシャン・故人)を! 新政権はブラジルの民衆を恐れない。政権はブラジルの民衆そのもので、民衆と共にあるのだ!」と独特な言いまわしで、国粋思想を展開した。
外相はイタリア、ハンガリー、ポーランドら、右派ポピュリズム政党が政権を握る国々を賞賛した上で、「ブラジルのこれまでの輸出促進政策は、まるで諸国に〃哀願〃して買ってもらっているかのようだった。ブラジルは世界屈指の食糧生産国として、もっと堂々と交渉すべき」とも語った。
新政権は、反対派に「共産主義者」「マルクス主義者」などのレッテルを貼り、こき下ろすのが得意だが、さすがに、国際社会での存在感をますます高める中国(共産党独裁国家)を無視する事は出来ず、大統領自身が2日に、中国全人代常務委員会副委員長の吉炳軒氏と会談した。
両者は、ブラジルと中国、両国間の通商関係の一層強化と、貿易に限らず、科学技術や農業、産業開発部門においても協力関係を深めていく事で合意した。
ブラジルにとってのもう一つの重要な外交パートナー米国は、1日の就任式にポンペオ国務長官を派遣、同長官は2日にアラウージョ外相と共同記者会見を行った。
ポンペオ国務長官はその中で、米国は安全保障問題でブラジルとの協力を深め、また、世界の独裁政権諸国に共同して立ち向かう意思があると表明した。
同国務長官はキューバとベネズエラ、ニカラグアの3カ国を名指しし、「キューバは失政と抑圧の歴史が60年も続いている。アラウージョ外相とはベネズエラ危機についての意見交換もできたし、我々がベネズエラ民主化を強く望んでいることも伝える事が出来た」と語った。
同長官は1日の就任式の様子を、「無数の人々が街に出て、平和裏に政権移行が祝われるという、素晴らしい機会に参列できた。キューバやベネズエラ、ニカラグアなどでは、国民はこうした機会さえも与えられない」と賞賛した。
3日付現地紙は、「ボルソナロ新政権の発足を、マドゥーロ独裁体制の続くベネズエラを孤立化させるための好機と米国は見ている」との分析を掲載している。