サンパウロ市北部にある徳島県人会館の賃貸契約の更新を巡り、カラオケ・ダンスでそこを利用する日系文化協会との間でいさかいが生じている。契約更新は二年毎に実施され、その際の賃料値上げは総合市場物価指数(IGPM)に基づいて調整されることになっていたが、赤字運営に悩む徳島県人会が急きょ、4割値上げを求めたためだ。両者は感情的に対立し、平行線を辿っている状態だ。
日系文化協会は、高齢者向けにカラオケ・ダンスを20年以上続けている団体。以前使用していた建物の建替工事が行われることから、16年11月から2年間契約で徳島県人会館を使用してきた。契約書によれば契約更新可能で、賃料調整はIGPMに基づくと規定されている。
ところが日系文化協会の入津ジョゼさんは「契約が切れた11月中頃、賃料を4割上げるといきなり連絡がきた。IGPMに基づけば、約8%のはず。不条理だと言うと『払えないのであればすぐに出ていけ』と一方的に言われた」という。
「とてもじゃないけど、こんな値上げされたら年金暮らしの年寄りは耐えられない。カラオケ・ダンスは唯一の楽しみで、90歳を超える人もいれば、遠方から出てくる人もいる。皆喜んで参加しているのに、活動できなくなると不安が広がっている」と話す。
もとの契約では土・日曜日となっていたが、契約が切れた11月以降は、契約更新のないまま日曜日のみ利用している。今後も会館を利用してゆく考えで、仲裁のため弁護士を入れて係争解決してゆくという。
一方で、徳島県人会の原田昇第一副会長は「会館運営が赤字でやり繰りできなくなりつつあり、このままではIPTU(都市不動産所有税)も払えなくなる。加えて、前会長時代に安い賃料で契約され、他所に比較してもかなり安かった。そうした事情で、会として賃料値上げを決めた」と厳しい懐事情を明かす。
だが「『出て行け』とは言っていない。私達も100%正しいとは思っていないし、急な値上げで怒るのも分かる」と理解を示しつつも、「でも先方は怒ったきりで、話の持っていきようがなくてこちらも困っている。『法外だ。こういうことをするなら、弁護士も入れてやる』と捨て台詞を吐いて出ていってしまった。このままでは、こちらも運営が立ち行かなくなるのでお願いのつもりだったのに…」と頭を抱えた。
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会館賃貸料値上げを巡って発生した本件。契約違反だと主張する利用者側の意見は最もだが、赤字運営に悩む県人会の懐事情もよく理解できる。双方とも「言った」「言わない」で揉めている部分があり、感情対立が大きい。たしかに弁護士に仲裁を頼むのも一つの策。だが、ここはひとつ互いに冷静になり、膝を突き合わせて、まずはよく話し合ってみては。