ジャイール・ボルソナロ大統領は4日昼食時、金融取引税(IOF)を引き上げると宣言した。しかし、新政権の経済スタッフやオニキス・ロレンゾーニ官房長官が同日午後、「そのような予定はない」と取消を行い、閣僚間の意思疎通不足をうかがわせた。5日付現地紙が報じている。
IOFは融資や貸付、金融機関による金の取得の際に課される税金のことだ。4日昼食時、ボルソナロ大統領はこれを引き上げるための大統領令に署名したと明かした。また、この引き上げは、北伯と北東伯への経済援助の期間延長に伴う補填策の一環だと説明した。
この大統領令に関する詳細は明らかにされていないが、この発表を経済スタッフは驚きをもって受け止めた。ボルソナロ氏は選挙キャンペーン中から「増税や税の優遇措置は行わない」と約束していたのに、新政権発足早々に、公約を破ることになるためだ。
ボルソナロ氏はこの増税に関して、「財源補填のために増税を行わないと、財政責任法に引っかかってしまう」とし、その有効性を認めている。
だが、同日午後、国税庁特別局長のマルコス・シントラ氏が大統領との会談後、「IOFを引き上げる必要はない」として、ボルソナロ氏の発言を否定した。
シントラ氏はさらに、ボルソナロ氏が合わせて発表した、所得税の最も高い税率を27・5%から25%に下げるという発言も否定した。
パウロ・ゲデス経済相は大統領発言後、この日に予定されていた唯一の公務予定をキャンセル。経済相がこれらの件について何らかの釈明をするチャンスがなくなったのを見たオニキス官房長官は、予定にはなかった記者会見を開き、「何か勘違いがあったようだ。IOF引き上げに関する具体的な話は出ていない」と否定。「北部や北東部への支援開始は2020年だから、今すぐにIOFを引き上げる必要はない」と説明した。
エスタード紙によると、今回の問題は、連邦政府内の対立を浮き彫りにさせたものだという。今回のIOF引き上げ問題に関する情報を漏らしたのは、大統領府総務室長で、ボルソナロ氏が所属する社会自由党(PSL)の創始者のグスターヴォ・ベビアーノ氏だったという。べビアーノ氏はゲデス経済相とも懇意で、社会保障制度改革の早期承認のため、ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)の再選を強く望む勢力を作っているのだという。
ところが、オニキス氏は同じDEM所属ながらも、マイア氏の再選を望んでおらず、ゲデス氏らと対立していたという。
ボルソナロ政権では大統領府内にリーダー格が乱立する状態になっており、誰が主導権を握り、政局調整の中心的役割をはたすのかがかねてから疑問視されていた。