ボルソナロ政権の教育行政が、早くも矛盾を露呈した。政権発足の翌日の2日付官報に載せられていた、公立校の教科書選定基準を書き換えると9日に教育省が発表したと、10日付現地各紙が報じた。
ブラジル連邦政府は年間10億レアルを投じて、公立校に配布する教科書を1億5千万冊購入している。
2日に一旦発表されたが、9日に書き換えると発表されたのは、2020年に6年生から9年生までの4学年が使う教科書の選定基準だ。
テメル前政権は昨年10月、全国教材図書計画(PNDL)の中で「引用文献、出典を必ず記す」「女性への暴力を助長するような表現を避ける」「キロンボと呼ばれる、元逃亡奴隷の子孫共同体の文化や歴史を尊重する」「ブラジルの文化や人種の多様性を尊重する」といった項目を明文化した。だが、2日付官報に貼られたリンクに掲載された文書には、これらの項目が含まれておらず、誤植などに対する基準も緩くなっていた。
2日付官報の内容を9日付エスタード紙電子版が公開した事を受け、ボルソナロ政権下の現教育省は、「前政権が12月28日に送って来た文書をそのまま掲載したもので、指摘されたミスは訂正する。全国民への平等な教育は現政権の目指すところで、現政府やリカルド・ヴェレス教育相が、女性への暴力抑制や多文化尊重を記した条文を削ると決めた事実は一切ない」との書面を発表している。
だが、ボルソナロ政権の移行スタッフは、昨年の12月初めに省内に入り、前政権のスタッフと共に作業を行っていた。
現在はサンパウロ州教育局長を務めるロシエリ・ソアレス前教育相も、「12月の政権移行準備期には、『教科書に付随する音声教材の基準の変更』を加える事しか要請していない」と語っている。音声教材の基準変更は、リンク掲載の文書にも盛り込まれていた。
2日付官報の内容がそのまま通用していれば、教科書の品質が下がりかねないところだったと専門家も語り、全国教科書出版社協会(Abrelvros)幹部のヴェラ・カブラウ氏も、「PNDLは益々、客観性、透明性を高めており、党派色の薄いものになってきた。この流れが続いてくれれば良いのだが」とは語っている。
ボルソナロ大統領の教育政策検討グループにはかつて、「子供に〃不適切な内容〃が教えられるのを防ぐため、文献引用基準は見直しても良いのでは」と発言する軍人が所属していた事もあり、教育関係者の間からは政権発足前から、「ボルソナロ政権は教育に圧力を加えるのでは? 〃軍政時代の真実〃について、教師はどのように教えたらよいのか?」といった声が出ていた。
教育系NPO「全ての人に教育を」のプリシラ・クルス代表は、「科学的思考は全ての社会にとって重要。子供たちはその情報がどこから出たものか、出典を知る事の重要さを知らねばならない」と語っている。