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《航空大手》エンブラエル=米ボーイングとの提携、大統領否決せず=「国益は損なわれない」

エンブラエル社の工場(Sgt. Batista/Ag. FAB)

エンブラエル社の工場(Sgt. Batista/Ag. FAB)

 【既報関連】ボルソナロ大統領は10日、ブラジルの大手航空機メーカー、エンブラエル社が米国のボーイング社と進めていた、「エンブラエル社から商用機部門を切り離して新会社を設立、その会社の株の8割をボーイング社が持つ」というオペレーションを容認する内容をツイートしたと11日付現地各紙が報じた。

 エンブラエル社は国営企業ではない。だが、ブラジル政府は議決権を担保する「黄金株」を所持しているため、ボーイング社との新会社設立オペレーションについては、16日までに政府承認が必要だった。ボルソナロ大統領は先週、新会社設立を認めないかもしれないと発言し、金融市場に緊張が走っていた。
 同大統領は10日に、「空軍や国防省、科学技術省の代表者たちと協議した。ブラジルの主権と利益が守られる事がはっきりしたので、政府としては両社の提携に反対はしない」とツイート。
 大統領府はその後に発表した書面で、「両社による新会社設立については、様々な状況を想定した上で詳細な分析がなされた。大統領はそれらの報告から、国益を損なう事はないと判断。拒否権は行使しないという結論に至った」事を確認した。
 エンブラエル社が国外企業と提携する事で、ブラジルの、特に軍事技術の流出が危惧された事が、大統領が提携承認を危ぶんだ理由だった。
 しかし、航空機製造工場はブラジル国内に残り、ブラジル人の雇用も失われない上、主要な技術者たちもブラジルに留まるため、提携を承認したとブラジル政府は述べている。両社がジョイントベンチャー方式で設立する商用機部門の新会社(仮称ノーヴァ・エンブラエル)にエンブラエル社が投入する資本は10億ドルである事も明らかにされた。
 エンブラエル社とボーイング社間の合意文書には、新会社は現在の生産体制を維持すると記されている。しかし、ボーイング社は、サンパウロ州カンピーナス市の労働検察に雇用削減を行わない旨を確約する事を拒否した。
 「新会社は、極めて競争が激しく、経済情勢の影響を受けやすい部門で活動する。『絶対に雇用を減らさない、工場をブラジル外に移転しない』と確約する事は経営の選択肢を狭める」がボーイング社の言い分だ。だが、ある幹部は、「新会社は成長の余地が大いにあり、雇用拡大も有望」と語っている。新会社の資本総額は52億6千万ドルで、8割の株を所有するボーイング社の負担は約42億ドルだ。
 両社は、エンブラエル社が製造していた軍用機KC―390の販売を行う新会社も設立。この会社の資本比率はエンブラエル社51%、ボーイング社49%だ。
 次のステップは、数日中に開催が見込まれているエンブラエル社の経営審議会だ。合意書の内容を吟味後、事業提携のための書類への署名が認められれば、株主総会開催となる。株主総会で承認後、エンブラエル社は自社に残る従業員と新会社に移る従業員の具体的な振り分け作業に入る。
 両社は連名で、全ての手続きが年内に終了することを希望するとの書面を出している。