ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》モロ法相が反汚職法案を準備=カイシャ・ドイス厳罰化狙う=〃すねに傷〃のロレンゾーニ官房長官との兼ね合いいかに

《ブラジル》モロ法相が反汚職法案を準備=カイシャ・ドイス厳罰化狙う=〃すねに傷〃のロレンゾーニ官房長官との兼ね合いいかに

セルジオ・モロ法相(Marcello Cadal Jr./Ag. Brasil)

セルジオ・モロ法相(Marcello Cadal Jr./Ag. Brasil)

 ボルソナロ新大統領(社会自由党・PSL)の主要公約の一つ、「汚職撲滅」の推進役として抜擢されたセルジオ・モロ新法相が、選挙資金の裏帳簿(通称カイシャ・ドイス)を犯罪として定義づける事を意図し、議会に反汚職法案を提出する準備を進めていると、13日付現地紙が報じた。
 モロ法相は、選挙裁判所に申告してない金(カイシャ・ドイス)を選挙に使う事を明確に犯罪と定義し、その罪も重くする事を狙っている。
 モロ法相とそのスタッフが準備を進めている法案には、「2審判決有罪時の刑執行開始の明確化」や、「特定の罪に関しては自宅軟禁措置などの適用(刑の軽減)を禁止する」「おとり捜査の法制化」、「匿名告発者のプライバシー保護の厳格化」、「汚職や暴力犯罪の厳罰化」なども含まれている。
 争点となっている、カイシャ・ドイスを犯罪と明文化する件では、過去の犯罪への恩赦は適用されない見込みで、ボルソナロ新政権の官房長官、オニキス・ロレンゾーニ氏(民主党・DEM)も、罪を免れ得ない。
 一昨年、ロレンゾーニ下議(当時)は、「14年選挙の費用として、食肉大手企業のJBSグループから10万レアルを秘密裏に受け取った」と認めた。ロレンゾーニ氏には、2012年も別件で10万レを受け取った容疑がもたれている。
 現在、カイシャ・ドイスは、選挙法350条に基づき、文書偽造罪として扱われる。量刑は最大で禁固5年だが、これまでに実際に有罪判決を受けた人はいない。
 法務省の思惑は、「カイシャ・ドイス」を「文書偽造罪」とせず、一つの犯罪として際立たせ、量刑も重くする事だ。ただし、選挙法350条を改正すると、憲法の「事後法によって裁かれることはない」との規定により、過去のカイシャ・ドイスが裁けなくなるため、モロ法相は350条を保った上での法規制定を考えている。
 USP法学教授グスタヴォ・バダロ氏は、「法を書き換えるのでなく、新たな罪状を加えるなら、現在は「文書偽造」罪に問われるカイシャ・ドイスも恩赦にはならない」と述べている。
 議会はこれまで、「汚職撲滅」といいながら、実際にはそれと真逆の行動を取ってきた。
 検察庁は16年にカイシャ・ドイス法も含む、反汚職法案を提出したが、議会で骨抜きにされた。議員たちは翌年も、350条改正という〃トリック〃を試みた。
 〃すねに傷持つ〃古株議員たちは、今回も議会を通る過程で法案が自分たちに有利に変更されるのではと見ているが、カイシャ・ドイス法推進を図る政府側は、新議会ではPSLの躍進を含め、多くの新人議員が当選していることに法案通過の期待をかけている。
 法務省は反汚職法案を2回に分けて提出する予定で、カイシャ・ドイスに関する法案がどちらに含まれるかは未定だ。