情報通信業者WILL株式会社(中井良昇代表取締役、東京本社)が先月20日、日本の消費者庁から特定商取引法違反により行政処分が下されていたことが分かった。当地では、16年1月から日系人向けにIPTV電話レンタル事業を実施し、17年に橋幸夫、18年に美川憲一など大物演歌歌手を招待して慈善ショーを催すなど、大々的に宣伝活動を行っていた。この行政処分は日本国内での適用だが、当地でも波紋が広がりそうだ。
消費者庁によると、先月21日から来年3月20日までの15カ月間、同社は連鎖販売取引に係る取引の一部等停止、大倉満会長、中井良昇代表取締役らには業務禁止命令が下された。
日本消費経済新聞サイトのWILL問題特設ページによると、同社は「テレビ電話8台を約60万円で購入してレンタルすると、3年間毎月2万円のレンタル料が入り72万円になる」として、日本の高齢者から高額な資産を集めていると指摘している。
全国の消費生活センターに寄せられた同社の相談件数は3年間で約300件に及び、一人当たりの最高契約金額は6千万円にも上るという。同紙は「被害拡大を防ぐための厳正な行政処分が急務」として、刑事告発に加え、同様の被害を繰り返さない法制度の厳格化の必要性を説いている。
同社は、TV電話のアプリケーションを読み込ませたカード型USBメモリを販売する連鎖販売取引業者。日本の顧客に買わせた商品を預かり、海外の顧客を中心に貸し出して、レンタル料を日本の顧客に支払うという預託商法を行っていた。
連鎖販売取引とは、商品販売と同時に個人を販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘させるというかたちで販売組織を連鎖的に拡大していくことが特徴で、これ自体は違法行為ではない。
今回、違法行為として消費者庁が認定したのはその取引手法であり、連鎖販売取引の公正さや相手方の利益が損なわれる恐れがあると判断したために行政処分を出した。
具体的には、勧誘者が勧誘に先立って「昼食に行こう」「旅行に行きましょう」などと誘い、相手方に対して統括者の名称、特定負担を伴う取引の契約締結について明らかにしていなかった。また、相手方から賃借したUSBメモリ個数を比較して、TV電話の第三者への賃貸台数が著しく少ない事実など、消費者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項について告知していなかったこと等が列挙されている。
なお、この処分は日本国内で適用されるものであり、WILL社ブラジル代理店「J‐VISION」社によれば、5月19日にサンパウロ市で開催予定の大物演歌歌手を招いた第3回目の慈善ショーの企画は継続中だという。