ボルソナロ大統領は15日、銃所有規制を緩和する大統領令に署名した。同大統領は、2005年の国民投票で銃の流通が承認された事を暗喩し、「国民が銃を買うと決めたのなら、我々にはその権利を否定する事はできない」と演説し、「国民に正当防衛の権利を保障するため、私はこの武器を使う」と言って、持っていたペンを見せ付けるパフォーマンスも行った。15、16日付現地各紙が報じている。
この大統領令により、25歳以上で前科、精神疾患がなく、刑事裁判の被告でなく、射撃技術の認定証を有する人物が、所有を希望する正当な理由を警察に提出し、認められれば、基本的に1人4丁までの銃所有が認められる事になった。
銃所有が認められるのは、農村部と、危険な市街地の住人だ。「危険な市街地」の定義は、「殺人事件発生率が人口10万人当たり10人以上の州内の各市」と大統領令に明記されている。この定義だと、ブラジル全州が当てはまる。
規制が緩和されたのはあくまで「所有」で、所有者は護身のため、銃を自宅や商業施設に保管する事が出来る。規制緩和推進派は、「次は議会で銃の『携帯』規制の緩和を」と意気込んでいる。
セルジオ・モロ法相は、所有は2丁まで、所有許可は5年間、子供や精神疾患者と住んでいる人は家に保管庫があると「証明」すべきだと進言した。だが、大統領令では、4丁まで所有でき、所有期間は10年間。保管庫の有無は「申告」するとなっている。
大統領令発令後、同法相は、「規制緩和の反対派、推進派双方から批判が出ている。これは、大統領令が両者に配慮し、中間をとったことの証」と語った。
ボルソナロ大統領は銃にかかる税金を下げる事、さらには銃の携帯規制の緩和、国内銃市場の開放も狙っている。
また、過去に購入した銃の登録を2009年までに更新しそびれ、違法所有となっている所有者については、今月中に再登録期間を延長する暫定令が出される見込身である事も、オニキス・ロレンゾーニ官房長官(DEM・民主党)が明らかにした。同長官は「あくまでも銃の再登録期限延長で、恩赦ではない」としている。
同長官によれば、政府は数カ月以内に、「銃携帯規制の緩和」「国内の銃市場開放」「銃コレクター、ハンティング愛好家、スポーツ射撃選手に向けた特別規定」を議会に提出する意向だ。
「治安回復」は新政権に期待される主要課題の一つだが、12月に行われたダッタ・フォーリャの世論調査では6割の国民が銃規制緩和に反対。一部の専門家も、治安は悪化すると見ている。
大統領は「銃規制緩和ではなく、市民の正当防衛の権利を守るためだ」と繰り返し主張しているが、国民、マスコミの反響は大きく、「銃携帯」まで議会の理解が得られるかは不透明な情勢だ。