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「ツイてる滑り出し」はどこまで続く?

15日のボルソナロ氏(Alan Santos/PR)

15日のボルソナロ氏(Alan Santos/PR)

 ボルソナロ氏の大統領就任から2週間が過ぎた。この間は、同氏の政治家人生の中でも最高の2週間だったのではないかと思われる▼ひとつは、年が明けてから続くドル安と株価の上昇だ。これには「左派でない大統領がついた」という市場の安堵感があることと、パウロ・ゲデス経済相が打ち出している公社民営化が国外の投資家たちにとっておいしく見えるためだろう▼そこに加えて12日に起こった、イタリアのテロ殺人犯チェーザレ・バティスティ氏の逮捕だ。逮捕したのはボリビアの警察で、逮捕命令を整えたのはテメル前大統領ではあったが、「バティスティ氏のイタリア送還」はボルソナロ氏の公約の一つだっただけに夢はかなったということになった▼こうしたことに由来する好印象が、15日に調印した銃規制緩和にも有利に働いたように思う。6割が「銃の使用を禁止すべき」と答えているデリケートな問題。政権の評判が悪いときにでも推し進めようものなら厳しい批判の対象にもなったであろうが、物議は醸しつつも勢いがあるまま押し切ったように見えているのは、ボルソナロ氏の読み勝ちだと言えるかもしれない。こうしたよい雰囲気は、コラム子の読みだともう少し続きそうな気がする。今すぐに評判を極端に覆すような悪いことが起こる気がしないからだ▼ただ問題は、このムードが一体どこまで続くかだ。忘れてはならないのは、現在まで続く流れは、テメル前政権が作ったもの。景気が上向いてバトンタッチできたのも前政権のおかげだし、ボルソナロ氏の人気が相対的に高く見えるのも、前政権の記録的な不人気との対比があるためだ。その意味で、まだ「ボルソナロ政権の真価」が出たわけではない▼その一方で、現時点で直接的なダメージを被っているわけではないが、見え隠れしている不安要素も少なくない。エルネスト・アラウージョのあまりに極端な反グローバリズム外交路線はいつ諸外国との間に亀裂が生じてもおかしくないものだし、教会をあまりに重要視しすぎるあまりに、本来しっかりと守らないとならないはずの女性や同性愛者の気持ちをさかなでする発言を連発するダマレス・アウヴェス人権相は早速国民の間でジョークのネタのひとつになっている。さらには、「政党なき学校」を推進し左翼思想を極度に毛嫌いするリカルド・ヴェレス・ロドリゲス教育相や、国際基準で環境課題を遵守できるかも怪しいのにくわえ環境問題での不正で既に有罪判決まで受けているリカルド・サレス環境相のような人までいる。あと、やたらと据えた軍人閣僚の人たちも実績的にはほぼ未知数だ▼閣僚だけでこれだけの不安材料があるのに加え、2月からは連邦議会がはじまる。ここでも、ボルソナロ氏の社会自由党(PSL)は下院議員数こそ1位であるものの、その大半は1年生議員。しかも前政権までが普通にやっていた政党連立を行なっていないため、議会運営がしっかりできるのかもまだ未知数。中にはボルソナロ氏にほれ込んだ勢いで直情的に出馬して幸運にも選ばれたタイプの議員も少なくないため、そういう議員たちがトンデモ発言をかなりやらかしてしまいそうで、今から心配でもある▼いずれにせよ、ボルソナロ政権の真価が問われるのは、もう少し先なのは間違いない。(陽)