南東部ミナス州の州都ベロ・オリゾンテ大都市圏ブルマジーニョで25日、ヴァーレ社所有の鉱滓(鉱山採掘の過程で発生する有毒な汚泥)ダムが決壊した。この事故により、大量の鉱滓が周辺地域へ急激に流出し、市街地やバスなども丸ごと飲み込んで、多数の死者、行方不明者を出したと、26~28日付ブラジル各紙が報じている。
28日昼までに発見された遺体は60人分で、19人の身元が判明している。192人が救出され、382人の無事も確認されたが、行方不明者はまだ292人おり、家を失った人は135人に達している。
同州では15年11月にもマリアーナで同様の鉱滓ダム決壊事故が発生し、ブラジル史上最大の環境破壊を引き起こした。現時点では、環境破壊の規模はマリアーナの方が上だと見られているが、その時の死者は19人だから、今回はブラジル史上最大の労災事故となる見込みだ(過去最大の労災事故での死者は69人)。
事故当日、ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は、地域開発省、環境省、鉱山動力省、ミナス州政府らと共同で、対策本部の設立を宣言、「少しでも被害を食い止めるため、必要な手段は全てとる」と語り、政府官報には、緊急非常事態宣言の発令も記された。
同大統領は事故の翌日にヘリで上空を視察後、「惨状を見て、感情を抑えられなかった。残念だが犠牲は増えるだろう」と語った。
イスラエルは、各国に先駆けて救援部隊の派遣を決定、27日夜には136人が現地に到着している。
27日早朝5時半ごろには、決壊した1番ダムの隣の6番ダム(水を溜めるダム)にも決壊の危険性があるとの警報が鳴り、近隣住民は高台への避難を余儀なくされた。捜索、救出作業も、ほぼ10時間中断された。
一人の生存者も発見できなかった27日の作業後、指揮に当たった災害救助隊の隊長は、「時間と共に、生存者発見の可能性はどんどん低くなってしまう」と語った。
今回決壊したのはミナ・ド・フェイジョンと呼ばれる鉱区から出た鉱滓を溜めておく1番ダムだ。流出した鉱滓は1270万立方mに及ぶ。これは、長さ50m、横幅25m、深さ2mのオリンピック用プール5080杯分だ。
決壊したダムは鉱山の高台、標高912m地点にあった。流れ出た鉱滓は、低地の4号、4号Aダムをあふれさせ、採掘された鉱物を運搬する線路、鉄橋、ヴァーレ社のダム管理センター、居住区域も次々に直撃した。
流出した鉱滓は、事故現場から8キロ以上離れたパラオペバ川にも大量に流れ込み、流域汚染が懸念される。同川下流にはレチーロ・バイショ水力発電所があり、汚泥の勢いを弱めてくれると期待されているが、同発電所は28日、汚水到達による機材損傷などを懸念し、運転を停止した。
また、司法当局は26~28日に、損害賠償や復旧作業費徴収のため、ヴァーレ社口座を凍結。28日現在の凍結総額は118億レアルに上っている。