リオ選出下議で、連邦下議では史上初の同性愛公表者として知られるジャン・ウィリス氏(社会主義自由党・PSOL)が、自身の命が狙われているとして国外に避難、24日には、昨年10月に再選した下議返上を宣言した。この件と、同件に対するボルソナロ大統領などの反応をめぐり、ブラジルにおける人権意識が国の内外で問題視されている。25~26日付現地紙が報じている。
ウィリス下議は24日にフォーリャ紙に対し、下議辞任を表明した。その理由として、昨年3月に起きた、同じく同性愛者である、リオ市議のマリエーレ・フランコ氏(PSOL)の射殺事件をあげている。
ウィリス氏はこの事件の前から、自身や家族が脅迫を受け、暗殺を予告されていた。しかし、この事件以降、脅迫の頻度が増したとし、向こう4年間、生きていられる保証がないと考え、下議返上を希望した。
PSOLも既に、ウィリス氏の補欠として、同じく同性愛者でリオ市議のダヴィド・ミランダ氏を据えるべく、準備を進めている。
ウィリス氏は2005年にグローボ局で放送された番組「ビッグ・ブラザー・ブラジル」の第5シーズンに出演して有名になったが、当時から同性愛者として知られ、2010年に下議に初当選(14年にも再選)。以来、下院でのLGBT問題を代表する議員として知られていた。
だが、その当時から嫌LGBT派の議員との仲が険悪なことでも知られ、2016年4月のジウマ(当時)大統領の罷免投票の際には、現在は大統領のボルソナロ(当時)下議が軍政時代に拷問を行ったウストラ将軍に自身の票を捧げたのを不服とし、つばを吐きかける事件も起こした。
その件もあり、かねてからウィリス氏はボルソナロ信奉者から攻撃対象とされていたが、ウィリス氏の下議返上が報じられた後、ネット上では「キューバに行け」とのからかいや「昨年9月のボルソナロ氏暗殺未遂を命令した」などのフェイクニュースが流れた。
24日は、ボルソナロ氏が「最高の日だ」、同氏の次男でリオ市議のカルロス氏も「神よ。最高に幸せだ」とツイート。本人たちは後で、「ウィリス氏のことではない」と否定したが、強く怪しまれた。
ウィリス氏の辞意と避難、その反響に関しては米国のニューヨーク・タイムスやワシントン・ポスト、英国のガーディアン紙などで否定的に報道された。国内でも「暗殺予告を受けた人にイデオロギーは関係ない」として、その反応を問題視する世論が目立った。