ブラジル山口県人会(伊藤紀美子会長)は、総務省が委託して山口県の村岡嗣政(つぐまさ)知事が招聘した「中南米日系社会と国内自治体との連携促進事業」に参加し、28日から10人の若者を山口県に派遣した。2月3日まで。
今回のプロジェクトは総務省が行う初めての事業で、山口県は実施第一号の県となる。同プロジェクトは、山口県の歴史・文化体験、ホームステイ、県民との交流を通して、在ブラジル同県人会の基盤を維持することが目的。若手日系人の県人会離れに歯止めをかけ、若い世代とのネットワークを築くために実施される。
参加条件は、山口県人会がブラジルで行う24回程度の日本語・山口県の歴史文化講座を受講すること。会報やフェイスブックで応募を募り、伊藤会長と元県費留学生で二世の脇山マリナさんが講師を務め、24回の授業を実施した。講座には県系子弟だけでなく、同県外にルーツをもつ日系人や、非日系人の若者が数十人参加し、その中から10人が派遣されることとなった。
一行は29日に山口県庁を訪問後に山口市内を視察し、30日には着付けを体験。2月1日まで萩市、下関市、防府市、岩国市の4市を訪問し、1日夜から2日までホームステイを行う。また、3日には東京都内も視察する予定だ。
同県子弟で三世のヨウダ・フェルナンダ・サユリさんは「日本文化が好きなので、学ぶのが楽しみ。ラーメン、たこ焼きなどの日本食も好きで、食べるのを楽しみにしている」と声を弾ませた。
日本の江戸文化が好きで、浮世絵や水墨画などの日本美術に興味があるという非日系人のバルバラ・センハさんは、「萩市で吉田松陰の歴史を学ぶことや、常栄寺雪舟庭に行くのが楽しみ」と目を輝かせ、日本文化への想いを熱く語った。
伊藤会長は「山口県は長州藩として明治維新の中心となり、吉田松陰などの活躍した人物も数多い。皆には、そんな山口県の文化・歴史を知って帰ってきてもらいたい」と語った。
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山口県人会の伊藤会長によれば、今回のプロジェクトは一昨年の10月に山口県から紹介してもらい、昨年の6月ごろに山口県観光スポーツ文化部国際課を通してレポートを提出し、採択されたものだという。「応募したら、偶然受かったんですよ」と伊藤会長はあっさりと話す。参加条件の講座を実施する中で思わぬ効果もあった。それは、「若い人に負けていられない」と役員が日本の歴史や文化、エチケットを勉強し始めたこと。確かに、自分よりも若い子孫の方が、母県に関して詳しかったら悔しいだろう。現役員が活気づくきっかけにもなった同プロジェクト。県人会であれば参加可能なそうなので、他の県人会からも是非応募してみては?