【既報関連】25日に発生したミナス州ブルマジーニョの鉱滓ダム決壊事故に関して、決壊したダムの強度を監査し、安全性を保障する文書を作成、提出した技師ら5人が29日朝、逮捕されたと、同日付ブラジルニュースサイトが報じた。逮捕された5人の内、3人はヴァーレ社職員で、2人は下請け会社職員だ。拘留期間は30日で、全員がミナス州検察局によって取調べを受ける。
国家水資源庁(ANA)の報告書によると、ブラジル国内には2017年末現在で2万4092基のダムが存在する事が確認されているが、同年の場合、強度や使用状況を監査するスタッフは154人しかいなかった。また、2万4092基のダムの内、何らかの許可を当局から受けていたのは1万3997基で、全体の6割にも満たなかった。
同年の報告書では、45基のダムが「事故発生の懸念がある」と評価されていたが、今回崩壊したブルマジーニョのダムは、このリストに入っていなかった。
国家鉱業庁(ANM)が2017年付で出した報告書には、全国には790基の鉱滓ダムがあるが、同年に監査を受けたのは27%、211基だけと記されている。
ブラジルでは、15年11月にもミナス州マリアナ市で鉱滓ダム決壊事故が発生したばかりだが、ダムの監査体制はずさんで脆弱なまま、一向に変わっていない。水力工学の教授カルロス・マルチネス氏によると、ブラジル国内には監査状況の悪いダムが100基以上あるという。2010年には連邦議会で国家ダム保全政策(PNSB)が成立したが、これも実効が上がっていない。
25日に決壊したブルマジーニョのダムには2015年以降、新たな鉱滓は入れられておらず、流出したのはダムに溜められていた分だ。昨年12月には、ダム内の鉱滓の再利用とダムの稼動終了の認可が出ていた。
ヴァーレ社は決壊したダムのあったエリアのミナ・デ・ジャンガーダ、コレゴ・ド・フェイジョン地区の採掘量を、年間1006万トンから、1700万トンに増やす許可を昨年12月に受けたばかりでもあった。この許可を出したミナス州の環境当局は、25日の事故直後に同地域でのヴァーレ社の採掘活動を全面的に禁じた。
また、ブラジルでは事故発生後初の取引となった28日、ヴァーレ社株は24・5%下げて42・38レアルで取引を終え、時価総額にして710億レアルを失った。アミウトン・モウロン副大統領は同日、「ヴァーレ社幹部の強制退陣の他に、刑事処分も考慮に入れるべき」と発言、検察庁特捜局(PGR)のラケル・ドッジ長官も、「責任者を厳重に処分すべき」としている。
救出作業は事故発生から5日目となった29日も続いている。同日昼までに確認された死者は65人で、31人は身元が判明している。また、救出された生存者は192人、所在や無事が確認された人は390人、行方不明者は288人だ。