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《ブラジル》「週に3、4本の殺人予告」=反ボルソナロ派の論客に=ラップ歌手のマルセロD2

Marcelo D2(As fotos da Virada!, via Wikimedia Commons)

Marcelo D2(As fotos da Virada!, via Wikimedia Commons)

 90年代にロックとヒップホップを融合する音楽性で名声を得て、いまだに根強い人気を誇るマルセロD2(デー・ドイス)が現在、反ボルソナロ大統領派の国民の間でオピニオン・リーダーとなりつつある。
 D2の反ボウロナロ発言が注目を浴び始めたのは、昨年の大統領選のときだ。D2はツイッターで、当時の大統領候補、ジャイール・ボルソナロ氏(現大統領)に対して強い批判を展開し、その極右志向に賛同できない人たちの支持を集めた。現在、D2のツイッターには90万人を超えるフォロワーがいる。
 D2はこの現象を「マルセロ・ユッカはかつてこう言った。“声なきところに本当の平和はない”とね。平和に見えるときでも、人々が恐怖で声を挙げられないようでは本当の平和ではない」とみている。
 90年代のリオでD2の率いたバンド「プラネット・ヘンプ」と人気を二分したバンド「オ・ラッパ」の元リーダーがマルセロ・ユッカだ。そのユッカも先月、脳血管障害で53歳の若さでこの世を去った。D2の意識の中には「残されたもの」としての使命感もあるのかもしれない。
 D2は人気絶頂の90年代の頃から、ファヴェーラの貧しい暮らしや目に余る暴力など、厳しい現実を歌ってきたが、政治的発言を意識するようになったのは2006年頃だったという。「俺はその頃に(当時の)ルーラ大統領に手紙を書いたんだ。そのときに、こうした政治的なことについて語るのは、アートの中のひとつの大事なことなのではと考えるようになった」と語っている。
 近年、ボルソナロ大統領らが提唱する「学校で左派志向の教育をやめさせる」政策推進などの影響で、言論の自由を奪いかねない流れが生まれてきているとD2は感じている。
 これに対し「25年のキャリアの中で、言論の自由がここまで隅に追いやられたことはないね。でもブラジルは芸術を生み出す人に恵まれた国だよ。今こそ芸術家や教育者、知識人たちが正気でものを考えて、今いかに馬鹿げたことが起こっているかを語っていく必要があるんだ」とD2は熱弁する。「この国に必要なのは、治安よりもむしろ教育だ」とはD2の信条だ。
 D2はボルソナロ政権が主張する銃自由化などに関して「1日に数え切れないぐらい銃で死んでいるこのご時勢に、なぜ銃が必要なんだ」と強く反発している。そのほか、同性愛や女性、社会的弱者に差別的な同政権の信者にも強い疑問をなげかけるツイートを行い続けている。
 その結果、D2は「1週間に3つか4つは殺人予告をメールで受けるよ」という状況にまでなった。だが「まあネット上のことなんで、たいしたことはない。怖くなんかないよ」と今後も姿勢を変えるつもりがないと強調している。(4日付エスタード紙より)