ボルソナロ新政権の主要課題の一つ、「汚職撲滅、治安改善」を託されたセルジオ・モロ法相は4日、「犯罪防止法案」(Lei Anticreme)を発表したと、5日付現地各紙が報じた。法案には、組織犯罪、汚職、暴力犯罪に対抗する14の法改正が含まれている。
具体的な内容は「文書偽造罪で処理されてきた選挙時の闇帳簿(カイシャ・ドイス)を独立した罪とする」、「2審判決が出た直後からの禁固刑開始」、「銃撃戦で犯罪者を殺害した場合の警察官の罰を緩和する」、「汚職、公金横領、被害者を死傷させた強盗犯の自宅禁固刑を認めない」などだ。
現在入院中のボルソナロ大統領が職務に戻り次第、法案は議会に提出される。ただし、政治家にとって汚職厳罰化を認めることは、自分の首を絞める可能性があるだけに抵抗が強い。
今法案には、捜査を容易にする「司法取引を被疑者と検察の間でも行えるようにする」、放置されがちだった不法資金の取立てを進める「違法に手にした金で買った私有財産の没収を容易にする」も含まれている。
大規模麻薬組織が貧民街で強い影響力を持つのと同じく、武装した元警官、元軍人、元消防隊員などが「民兵」(ミリシア)となって法の支配の及ばない“統治”を行っていることに対し、モロ法相は今回批判した。新大統領やその長男フラビオ上議が過去にミリシア擁護とも取れる発言を行っていることへの牽制ともいえそうだ。
今法案の議会承認が一筋縄ではいかない事を自覚するモロ法相は4日、まずロドリゴ・マイア下院議長や12州知事らに限定して根回しを行った。法相はダヴィ・アルコルンブレ上院議長とも近々面会する予定だ。今法案の審議のため、特別委員会も設けられる。
反汚職の取り組みは今までもあったが、「10の反汚職法案」などは上院審議が1年以上も止まっている。モロはその二の舞を避けるため、1月から38人の政治家と会って討議を重ねてきた。その結果、今法案は「10の反汚職法案」を練り直して通りやすく変えたものを中心に、新しい内容を加えた格好になっている。
ただし、今法案の「汚職、公金横領、被害者を死傷させた強盗犯の自宅禁固刑を認めない」の部分に関しては、最高裁で逆の判決がすでにある。「『凶悪犯には自宅禁固刑を認めない』など、罪状によって受刑者待遇を変えるのは違憲」というもので、今法案が公表された後の最高裁の反応が気になる点だ。
政界関係者からは、「『反汚職』と選挙で大キャンペーンを打って当選した以上、法案成立に向けての国民のプレッシャーを感じる」との声も出ている。