できるだけ大型の支出削減を勝ち取りたいパウロ・ゲデス経済相の周辺からリークされたと思われる、かつてないほど厳しい社会保障改革案が5日付現地紙に掲載され、早くも議員たちからは反発の声が挙がっていると、6日付現地各紙が報じた。
このゲデス案には「年金受給開始年齢は男女共に65歳」「受給に最低限必要なINSSの支払い期間は一般市民20年、公務員25年」「満額受給のためには40年のINSS積み立てが必要」「各種恩給は法定最低賃金以下」「公務員の年金積み立て、給与天引き率アップ」などが含まれる。
ゲデス経済相はこれが通れば、「10~15年で、最低でも1兆レアルの国家歳出削減が可能」としている。
今年のINSSは、単年度決算で約3千億レの赤字になると試算されている。政府の基礎的収支(プライマリーバランス)の赤字分は、全てINSSによるものだ。
ゲデス経済相は「ボルソナロ大統領が退院したらすぐに見せる。大統領なりの考えで、『これは良し、これは駄目』と判断するだろう。財政難を解決できる案を出す事が大事」と語った。
「受給開始年齢が予想されていた60歳や63歳より高く、しかも男女が同じ65歳なのは遅すぎる」、「これまで1最低賃金とされてきた障害者向け恩給が、月額1000レで調整なしではキツイ」、「1月の大統領発言では、『次の任期以降、適宜状況を見て…』とされていた制度移行期間を、『10年以内』と決めてしまった」、「いままで35年間かと思われていた、満額受給するためのINSS支払い期間が40年と長くなった」、「農村労働者対象年金の条件が男女共に最低20年負担で60歳からでは厳しい」など、ゲデス案には既に多くの反対意見が出ている。
ロレンゾーニ官房長官も「ゲデス案は“たたき台”。政府としての最終案ではない」と発言した。今のところ「経済相が理想とする強行案」の状態で、今後、政府内や議会での協議をへて妥協点が模索されていくことになりそうだ。
マイア議長と手続き論でも意見の相違
成立までのスピード感にもこだわるゲデス経済相は、ロドリゴ・マイア下院議長と、承認手続きの上でも意見が食い違っている。議長は、憲法改正が必要な内容を含むゲデス案を、議会の憲政委員会(CCJ)、特別委員会の二つの委員会で討議にかけた上での本会議採決を望んでいる。
この姿勢からは、「議会のメンバーが大幅刷新された以上、委員会もやり直すべき」という筋論と、「下院定数の60%以上、513人中308人の賛成を固めるにはそれなりの時間が必要」という、法案否決だけは避けたいという慎重さが伺える。
しかし、ゲデス経済相は、前のテメル政権期に、社会保障改革案は委員会を通っているため、その案に補足修正を加える形で自分の案とすり合わせ、承認手続きを早めたい考えだ。