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ネイマールはこのままでいいのか?

ネイマール(Gustavo Gomes/Agencia Brasil)

ネイマール(Gustavo Gomes/Agencia Brasil)

 昨年のW杯でいまひとつ活躍できず、むしろ髪型や大げさな転倒などをからかわれたネイマール。それ以降、イメージのよくない彼だが、今週、「果たして彼に、自覚はあるのか?」と首をかしげずにはおれない行動をとった▼それは4日夜にパリで行なわれた彼の誕生会だった。27回目の誕生日を祝うこの会には、総勢500人が参加。そこにはエムバペやカバーニといったPSGのチームメイトである世界的サッカー選手も姿を現した。それだけでもすごいが、ウェズリー・サファドンやマリリア・メンドンサといった、現在のブラジルの若い人なら誰でも知っているような人気歌手をわざわざ呼んで彼らに歌を披露させたほか、自らも歌を披露する華やかな宴となった▼ただ、この行動に違和感を覚えた人も少なく無かった。自分の結婚式でもない、たかだか誕生日をサッカー・シーズン中にここまで盛大に祝う必要があるのか。ましてや現在、ネイマールは右足の中足骨を骨折中で、2ヵ月ほど試合に出られない状態で、所属のPSGに大きな戦力的打撃を与えている最中。さらにいえば、故障箇所は昨年の今頃も骨折したところで、W杯で本調子が出なかった理由のひとつにもなった。しっかり治療しないと、6月からのコパ・アメリカにも響きかねないものだ▼この誕生会に対し、バンデイランテス局の実況キャスター、ネットは「1歳の子どもじゃあるまいし幼稚だ」「そんなことをやっているヒマがあったら故障をなおせ」と批判した。だがネイマールは「招待されなかったからと言ってひがむんじゃない」と一笑に伏しただけだった▼「スター・プレイヤーとしての華やかさを表現する」。それはネイマールが18歳の頃からずっと貫いているスタイルだ。たしかにサッカーに限らずプロ・スポーツの選手というのは「子供たちに夢を売る仕事」であり、より魅力的に見せるためには、生活を派手に見せる努力も必要、とはコラム子自身も理解できる。そうした彼の行為はこれまでも「派手に遊んでも、グラウンドで結果をだせばそれでいい」とずっと黙認もされていた▼だが、「年齢的にもうそろそろ受賞してもいい頃」と思われている世界最優秀選手のタイトルでは、クリスチアーノ・ロナウドやバルセロナ時代の同僚でもあるメッシとの差は縮まらないまま。プレーでも、一定の働きはするものの、PSG移籍以降はクラブでもセレソンでも世界的なタイトルとは縁がない状態が続いている。そんなときだからこそ、時にはストイックな姿勢を見せるべき時なのではないだろうか。彼のような選手の場合、「派手な私生活に見合うだけの活躍」は常に求められ、それは「若さ」という甘えが認められなくなる年齢にさしかかってくると、余計に厳しくなる。そのことを自覚すべきではないだろうか▼そろそろ、ネイマールは油断できる立場でもなくなる。いまのところは「2022年のW杯までは少なくともセレソンのエース」と誰もが思っている状態であろうが、この先、調子をあげないと、下から浮上してくる新しい勢力に追い抜かれかねない。事実、ブラジルからは。現在イングランド・プレミア・リーグでブラジル人選手トップの得点を記録している21歳のリシャルリソンや、わずか18歳にして世界一の強豪レアル・マドリッドのレギュラーに定着しつつあるヴィニシウス・ジュニオルなど、彼の代わりを期待できそうな選手が育ってきている。気持ちの引き締めは重要だ。(陽)