サンパウロ市で空前の居酒屋ブームが巻き起こるなか、日本酒の試飲イベント「第2回飲み歩き」が11日夜、市内飲食店で催された。日本酒輸入商社アルキ・グループ(溝口建治セルジオ代表取締役)主催、佐賀県後援。隠れた日本の酒処として国外から脚光を浴びつつある佐賀県から4軒の老舗酒蔵が参加し、地酒をアピールした。
日本酒の正しい味わい方を広めることを目的とした同イベントは、17年11月に第1回が催された。前回参加した天山酒造、天吹酒造、古伊万里酒造に加え、光武酒造場が初めて参加した。
後援した公益財団法人佐賀県地域産業支援センターの申岳営業主任は「九州=焼酎のイメージが強いが、名水に恵まれ、米の産地である佐賀県は実は隠れた酒処なんですよ」と話す。
白鶴や月桂冠など全国的なシェアを誇る酒造メーカーには生産量では及ばないが、県内には27軒の蔵元が点在し、規模は小さいながらも優れた銘酒がある。
県が日本酒の輸出振興を支援することから、全国的に消費量が落ち込むなかでも、同県の生産量は昨年比で約7%増。輸出量は昨年比約2割増といい、「全国的にもトップクラス」と同法人の湯ノ谷英生海外担当プロジェクトコンダクターは言う。
湯ノ谷コンダクターによると「〝淡麗辛口〟の東北の日本酒に対し、佐賀は〝芳醇甘口〟が特徴」という。甘味が強い地元産の山田錦を使用し、塩辛い佐賀の食事に合うように適合したためと考えられている。
「ブラジルで佐賀産の日本酒が流通するようになったのはここ三年で、まだこれから。まずは飲み比べて味の違いを知り、楽しんでもらいたい」と話した。
試飲会では、流通業者、飲食店関係者や一般人が参加し、配られたお猪口を持って、日本酒を試飲し、繊細な深い味わいに酔いしれた。
1688年創業の老舗天吹酒造の十一代蔵元・木下壮太郎さんは、苺や林檎など花酵母を使用して発酵させた日本酒を紹介。試飲した非日系人女性は「どこか苺の風味がするよう。フルーティーな香りで飲みやすい。こんな日本酒は初めて」と驚いた様子で語った。
世界23カ国に輸出する天山酒造の七田謙介代表取締役は「地元産米の旨みを上手く引き出した日本酒は、日本食だけでなくほかの国の食事とも親和性がある。こうした機会に色々味わって、伯料理と合う日本酒を見つけて頂ければ」と期待を語った。
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湯ノ谷コンダクターによれば、佐賀県産日本酒の約2割が輸出されており、主に香港、上海、台湾、シンガポールなど所得の高い国・地域や北米向けが中心という。佐賀県では、日本酒、海苔、米、茶が有名だが、そのなかでも、輸出の可能性が一番期待されているのが日本酒だとか。「ワインと原料が違えども、日本酒はおなじ醸造酒。ワインが飲まれるところでは、日本酒も飲まれる下地があるはず」という。日本と欧州連合の間では経済連携協定が締結され、今月1日に発効した。いずれは欧州でもワインの代替として、日本酒を呑む文化が浸透するかも?!