ある日の午後、陸軍予備役大佐の京野吉男氏を取材していたら、軍事独裁政権時代の話になった。当時の話はタブー視されている印象なので、このように聞くのは初めてだった。
軍政時代は1964年に始まり、85年まで21年間続いた。現在83歳の京野氏は、当時30代、40代。まさに軍人として全盛期だった。
軍政時代は一般的に「クーデター」と言われるが、当時のインフレ率の上昇や財政赤字、農地改革などの社会改革の立案による国民のジョアン・ゴラール政権に対する反感や社会の混乱に対し、カステロ・ブランコ将軍がクーデターを実施したので、肯定派からは「革命」と呼ばれる。しかし軍政時代は、決して明るいものではなかった。
京野氏は「国のためにやった」と記憶をたどる。パラグアイ国境近くまで敵を追い詰めたときの様子。その時に京野氏がどう対峙し、命を奪うこともあったとの告白も。どれも生々しい。
戦後に日本で平和に育った身としては、軍隊は遠い存在だ。正直に言うと、話を聞いていて寒気さえ覚えた。軍政時代について書かれている資料によれば、「少なくとも437人が死亡・行方不明にされた」とある。その事実がうっすらと頭によぎった。(有)
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