17日まで行なわれたベルリン映画祭に出展したことで、ブラジル映画「マリゲーラ」が話題を呼んだが、軍政時代の左翼ゲリラのリーダーを描いたこの映画を巡り、右翼のブラジル国民が酷評攻勢をかけて、アメリカの大手映画サイトを混乱させる事態に陥った。
この作品は、国際的知名度も高いブラジル映画「エリート・スクワッド」や、ネットフリックスのドラマ「ナルコス」に主演した俳優ヴァギネル・モウラが初監督をつとめたことで、国際的にも話題を呼んでいた。
ヴァギネルが、60年代の左翼反体制派のリーダーだったカルロス・マリゲーラの伝記映画を作ることに関しては、当初から、現在の極右政権の大統領ボルソナロ氏へのあてつけではないかと言われていた。
だが本人はそれを否定した。とはいえ、今回のベルリン映画祭でも彼は、昨年3月にリオで射殺された、ファヴェーラ出身の同性愛黒人女性市会議員マリエーレ・フランコ氏への追悼として、リオ市内で作られた交通標識のネーム・プレートを持参して抗議運動を行なっている。
このネーム・プレートは、昨年の大統領選をはじめとした統一選の際、ボルソナロ氏の所属政党の候補が選挙キャンペーンの際に演台で叩き割るパフォーマンスを披露した。最近になって、マリエーレ氏を殺害したのがリオの貧民窟を支配する民兵組織の可能性が有力となり、そことボルソナロ氏の息子のひとりが関係を持っている疑惑が浮上、左翼と右翼の対立が深まっていた状態となっていた。
この映画はベルリン映画祭においてコンペティション対象作ではなかったために受賞などはなかった。だが、評判そのものはかなりよく、アメリカの映画業界紙「ハリウッド・レポーター」で「エキサイティングでその後の監督キャリアを保証するデビュー」と称されたのを筆頭に、好意的な評価が目立っていた。
だが、世界的な映画情報サイト「IMDB」の「マリゲーラ」の採点票には、10点満点中、異例なまでに低い点数が集まった。このサイトでは通常、どんなに評判の悪い映画でも10点満点中で5・0以下がつくのが稀なところを2・8点という評価がついていた。
また、同映画祭に行った人しか見られないはずのこの映画に、あまりに多くの人が採点しているため、IMDBはこの投票を無効にし、「映画公開前」の状態とした。
この映画のブラジルでの公開日はまだ決まっていないが、この混乱だと先に国外で行なわれる可能性もありそうだ。
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