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カーニバルで踏んだり蹴ったりのボルソナロ

デスフィーレの優勝を喜ぶマンゲイラ(Tania Rego/Agencia Brasil)

デスフィーレの優勝を喜ぶマンゲイラ(Tania Rego/Agencia Brasil)

 ブラジルにおけるカーニバルのデスフィーレ(パレード)は、伝統的に社会風刺の場でもある▼これはカーニバルというものの成り立ち上、どうしてもそうなってしまうものだ。元々、カーニバルは黒人起源の祭り。社会的弱者でもある、彼らの見方が優先されるのは自然な流れだ。また一方、デスフィーレを見る側にしてみても、日常の憂さを晴らすような痛快な演目が出てきたほうが共感もできるし、楽しく笑えもする▼昨年のリオのデスフィーレでもテメル前大統領が散々な嫌われようだった。今年はとりわけ、これまでに数々の黒人差別発言を行なってきたボルソナロ氏が大統領だけに、黒人側の彼に対する批判を止めることは難しいのではないか。コラム子はそう思っていた▼そして、いざ、ふたを開けてみると、その予感は敵中した。実際に「ボルソナロ人形」が具体的に登場したのはペルナンブッコ州オリンダのカーニバルくらいのものだったが、多くのカーニバルで間接的な形でボルソナロ氏を挑発する内容のものが目立っていた▼たとえばサンパウロ市カーニバルで優勝したマンシャ・ヴェルデは人種差別を問題としたエンレド(テーマ)だった。黒人のみならず、先住民、キロンボへの差別発言でも知られる同氏にとって耳に痛くないはずがない▼そして、大統領の選挙地盤であるリオはもっとキツいものだった。圧倒的強さで優勝したマンゲイラ、3位に入ったヴィラ・イザベルは、昨年3月に射殺されたリオ市議、マリエーレ・フランコ氏をテーマに選び、遺族と一緒に行進を行なった。マリエーレ氏は女性で黒人で同性愛者で急進左派政党所属と、ボルソナロ氏が嫌う要素が満載な人物だ。同氏の社会自由党(PSL)の政治家も、彼女の記念碑として作られた番地プレートを公衆の面前で破壊する行為を選挙期間中に行なって行なっている。さらに大統領の長男フラヴィオ氏は、マリエーレ氏を殺害した主犯と目されるリオ西部のミリシア(民兵組織)と浅からぬ関係を持っている疑惑も報じられている▼そうしたこともあってイライラが募っていたからだろうか、ボルソナロ氏は5日、自身のツイッターで、ある通りのカーニバルのブロッコで、男性がもうひとりの男性の顔に立小便をしている姿が映された動画を発見。これを自身のツイッターで拡散し、「これが今のカーニバルの現状だ。立て直さないと」とツイート。しかし、これが裏目に出た。「一国の大統領ともあろうお方がなんと下品な」と批判的な反応が相次ぎ、さらには「医者に診てもらった方がいいのでは」というもの、遂には「憲法では職務に相応しくない行為を行なった場合、解雇できる」と罷免まで要求する声があがったほどだ▼さらにこの件は国外でも報じられ、英語で「放尿」を意味する「ゴールデン・シャワー」という見出しで報道されると、次に大統領は「ゴールデン・シャワーって何だ?」とツイートして失笑される始末。大統領就任後初のカーニバルは踏んだり蹴ったりのものとなったようだ。(陽)