サンパウロ市近郊のスザノ市にある州立学校で13日朝、教師や生徒ら8人が殺害された銃乱射事件を受けて、地元日系社会に動揺が広がっている。事件当日、市内他校も襲撃されたとの噂が流れ、市内の日系私立初等学校「スザノ日伯学園(CENIBRAS)」にも子供を迎えに保護者が押し寄せるなど混乱が広がった。同校は高学年を対象に説明会を実施して心のケアにあたっており、来週早々にも今回の犯行と関連性があると見られるゲームと仮想現実について同校駐在の心理士が講義する予定といい、矢継ぎ早に対策に乗り出している。
「事件後、『市内の複数の学校が襲われた』との噂が飛び交い、心配して子弟を迎えにきた保護者もいたくらいで、市内中の学校が混乱していた。生徒にも動揺が広がっている」――同日伯学園の安楽恵子校長は、事件の影響をそう説明した。
伯字各サイトによれば、容疑者2人は州立学校の元生徒。同校に恨みがあったと見られ、警察は、容疑者が所持していた回転式拳銃、ボウガン、弓矢、火炎瓶、斧などを押収している。
安楽校長は「容疑者の格好や武器から、あるゲームに感化されたのではないかと教師の間で話が持ち上がっている。私自身はそのゲームの存在すら知らなかったが、弓矢を使うなど普通でなく、確かにゲームと非常に良く似ている」と話す。
そのゲームとは「Fire・Free」。孤島に落下傘で着陸した50人のプレーヤーが、様々な武器を拾い集めて装備し、10分間の間に他のプレーヤーを殺戮し、生存を競うものだ。
安楽校長は「本校常駐の心理士は『ゲームが直接の原因ではなく、容疑者の心に根深い問題があった』と見ており、報道を見る限りにおいては、健康的な生活をしていたようには見えない」と家庭内の問題を指摘。「子供はゲームに夢中になりやすい。仮想現実を現実の続きと錯覚させてはいけない」と考え、心理士による講義を来週早々行ない、事件に向き合っていくつもりだ。
同校では心理士2人が常駐し、生徒のカウンセリングをする。「相談を受けたらまずは保護者、次に子供から話を聞く。『勉強に身が入らない。ボーっとしている』という時、家庭に問題がある場合が多い」と話し、「家庭に入り込み、担任やコーディネータと共に解決を図る。昔と違い、今はカウンセリングも開放的で相談しやすくなっている」と対策を語った。
一方で、スザノ元副市長の森和弘さんは「これはスザノに限らずに何処でも起こり得る。犯人は心理面に異常があったのでは」と見ている。
現地在住の水谷トシオさん(63、二世)は「事件の起きた州立学校は市内でも一番か二番に古く、教育レベルもそこそこ高い。市内では銀行強盗というのはたまにあったが、学校でこういう悲劇が起きたというのは前例のないこと。それだけにショックは大きい…」と声を落とした。
□大耳小耳□関連コラム
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アメリカ型犯罪だと思われていた学校テロ事件が近郊で起き、サンパウロ市民も大きなショックを受けた。しかも貧困地区ではなく、比較的裕福で落ち着いた雰囲気のスザノ市セントロで起きたことに驚いた人は多かった。地元では「犯人の17歳青年の母は薬物中毒者で、祖母に育てられた。その祖母が数カ月前に亡くなり、歯止めが利かなくなった」との話が出ているとか。もし家族関係が原因であれば、学校としては生徒のカウンセリングを通して両親と相談するしかない。拳銃の入手が容易かどうかは手段の問題であって、その手段がダメでも別の手段に替えればテロ実行は可能。最大の再発防止策は、殺人を楽しむテレビゲームに耽溺する少年を減らすことや、家族関係を崩壊させない何らかの策では。だが、学校が退学者や卒業生の面倒まで見る必要があるのか。それとも行政の責任?
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銃乱射事件当日、スザノ文協が会館を被害者に開放したり、軍警に利用させたことで、ブラジルのテレビ局の普段のニュースでは耳慣れない「Bunkyo」という言葉が、突然あちこちで聞かれた。文協関係者によれば、これはロドリゴ・アシウチ市長の要請によるものだったそう。同市長は文協会員でもあり、非常に近い存在だとか。行政の長たる日系人と、お膝元の地元日系団体の好連携プレーといえそうだ。