「日本祭りに追い風が吹いている。全伯で祭りに勢いがあり、日系社会を前へと引っ張っている。文化の力で、中南米全体を良い方向に変えていきましょう」――8時間超の講演で熱気に包まれた会場で、川合昭県連副会長はそう締めくくるようにコメントした。今月8日、在聖総領事館と県連の共催で『第一回日本祭り主催者シンポジューム』がジャパン・ハウスで催され、全伯の日本祭り主催者ら100人が参加し、経験共有や情報交換を通じて絆を深めた。
これは全伯の日本祭り主催者が一同に集い、経験共有や情報交換を通じて日本祭りの更なる活性化を図るための初の試み。計画、資金調達、リスク管理、文化コンテンツ、人材育成、地方日本祭り紹介など多岐に渡る内容を15人が講演した。
開会式で野口泰在聖総領事は、山田彰駐伯大使の挨拶文を代読。「全伯では一万人以上を動員する日本祭りが年間40件以上催されている。これほど広範に日本祭りが開催される国は他にない」とし、地域活性化への貢献に謝意を表わした。
山田康夫県連会長は「このシンポをずっと続けたい」との期待を語った。午前の部では、主催団体の共通課題である資金調達、広報戦略につき講演が行われた。
市川氏は、企業のマーケティング戦略から、協賛獲得の極意を伝授。協賛による企業側メリットは、知名度向上、商品宣伝、CSR(企業の社会的責任)によるイメージ良化に及び、「協賛は価値の交換でなければならない」と強調。
その説得材料として、来場者の人数、意見の把握などが重要な情報となることを指摘。「参加者の感想を聞いているところは」と問うと手が挙がったのは4人。「これでは少なすぎる」と重要性を強調した。「催事が終わって終わりではない。来年に向けて報告書を作る必要がある」と話し、協賛企業を獲得するための極意10カ条を示し、「これらをきちんと実践していけば獲得できる」と強調した。
続いて、青木タチアナさんがSNS(ネット交流サービス)を活用した広報戦略を説明。「昨年の県連日本祭りでは来場者の53%がSNSを通じてイベントを知った。これは過小評価できない数値」と重要性を強調。「各地の主催団体のSNSを見て気がついたのは、催事中の情報発信が盛んだが、終わったらそれっきり。これではダメ。催事の前、途中、後も更新し続ける必要がある。質問に対して返答し、閲覧者との絆を作ることも必要」と分析した。
「ネット検索で上位に出ることはもちろん、どの発信方法がその情報を閲覧してもらうのに効果的なのか、最適な手段を探ることが必要。まずは客層を把握することから始めて」と提言した。
最後に山内エリカコーディネーターは県連日本祭りの軌跡を辿り、08年と18年を比較して、協賛(9→12)、後援(3→29)、政府支援(6→15)が増加したと公表。「参加者のみならず、協賛・後援企業や出展者、社会が幸せとなる『三方よし』を達成することが日本祭りの継続に繋がる」と話した。(続く、大澤航平記者)
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日本祭りシンポでSNSの講演をした青木タチアナさんは、ブルーツリーホテルグループの青木智栄子社長の娘とか。彼女の話はかなり専門的で、たとえばボルソナロ大統領が頻繁に活用する24時間以内に消滅する短い動画のストーリー機能や、ライブ・ストリーミング機能(生中継動画)に加え、情報の拡散対象をピンポイントで絞る有料広告、大衆に影響力を持つユーチューバーなどのインフルエンサー(影響力のある発信者)を通じた情報発信方法を紹介した。このようなことが分かる世代でないと、これからの日系イベントは主催できない?!