訪米中のボルソナロ大統領は19日、ホワイトハウスでトランプ大統領と首脳会談を行った。トランプ大統領はこの会談で、ブラジルの経済協力開発機構(OECD)入りを推薦することを約束したが、その見返りも要求。米国にかなり有利になる条約締結などもあったようだ。20日付現地紙が報じている。
首脳会談は、かねてからトランプ氏を敬愛するボルソナロ氏がブラジル・サッカー代表の10番のユニフォームを贈呈し、「いつも米国が好きだった」「大統領就任時から目覚しい活躍をされてきた」と褒め称えたりする形で進められた。トランプ氏もそれらの言葉を喜び、和やかに話を進めた。
トランプ氏はボルソナロ氏に対し、OECDの加盟国に入れるよう後押しすることを約束した。
OECDは「マクロ経済学上の富裕国」が参加すると見なされている経済機関で、ブラジルの経済発展にとっては、国際投資を受ける上での信頼性の向上などをもたらす。
だがトランプ氏は、その見返りとして、ブラジルが世界貿易機関(OMC、英語表記ではWTO)に提訴している用件取り下げなどを求めた。米国からの条件をのむことは、ブラジルがメキシコやインドなどの新興国との間で結んできた条約と同様な条件での条約を結べなくなることを意味する。
OECDには韓国やトルコのような国も既に加盟している。だが、トランプ大統領は2017年にアルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領にも同様の約束を行っているが、同国のOECD入りは果たされていない。
また、トランプ氏はブラジルに対し、軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の加盟国外の協力国との認証を与えた。これはOECD加盟を促進させる措置ともいえる。
ボルソナロ氏は会見後に行われた共同記者会見で、ベネズエラに対する軍事介入に関して「会談で話し合った内容をすべて語ることはできない」とし、「米国が希望する軍事介入を支持するということ」とも解される発言を行った。この発言は伝統的に周辺国の紛争や問題には介入しない方針のブラジル軍部をいらだたせたが、その後、「外交的な解決が第一だし、最後までその原則は崩れない」と語っている。
他方、ボルソナロ氏は今回、米国人のビザなし入国(90日間、90日間の更新も可)を認めることを公表。トランプ氏もブラジル人の入国を容易にすると約束した。また、マラニョン州にあるアルカンタラ基地の米軍による商業使用(借用料は推定1千万ドル)を認める合意書が署名された他、一部の農産物の輸出入に関し、関税撤廃などの合意が成立した。具体的な合意事項には、米国産小麦75万トンの無関税輸入や、ブラジル産牛肉受け入れのための監査官派遣などが含まれている。
ただ、米国産小麦の無関税輸入は、ブラジルへの最大の小麦輸出国であるアルゼンチンやブラジルの小麦生産農家が大打撃を受けることになりかねず、強い懸念を生んでいる。