ビジネス交流を目的に、中南米で食品分野に携わる日系人経営者ら12人を招聘する訪日研修事業が1月に行なわれた。その報告会がJICA在サンパウロ事務所でこの7日にあり、ブラジルから参加した3人が報告し、高品質な食品を生み出す日本の職人気質を絶賛した。
今研修は1月21日から31日まで、長崎、福岡を中心に実施された。伝統を受継ぐ酒蔵、塩工房、醤油、お茶工場のほか地元名産品であるカステラや蒲鉾、うどんなどの食品加工工場、観光農園等を視察したほか、地場企業とのマッチングセミナーなどが行われた。
佐藤洋史所長は「二国間ビジネスの発展を目的として意見交換し、日本の地域活性化を図るもの」と事業趣旨を説明。「日本での経験が将来のビジネスに繋がり、日本食が当地の食文化をさらに豊かにすることに繋がれば」と期待した。
今回、秀島マルセロ氏(49、二世)、駒形エーネル氏(49、三世)、モリ・クラウジオ・ルイス氏(43、三世)が参加。研修事業の結果を報告した上、日伯の経済交流活性化を見据え、今後のビジネス展望を語った。
うどん製麺所が最も印象的だったという秀島氏は「職人魂が全く違う。原材料のみならず、全ての工程にこだわり、その先に消費者の幸せを見ている。パック詰めで麺一本一本が基準を満たすか確認しているのに驚嘆した」と話す。
「弊社では中国製の製麺機を使っているが、日本の技術導入や研修員派遣ができれば」と展望。
また、代々熟練の技が継承されてきた塩工房について「塩作りに加わっている子供の姿を見て、この伝統が永代に亘って続くものだと確信した。先人を重んじる日本民族の特性が、大きな違いを生むことに繋がっている」と所感を述べた。
南伯3州で20軒以上の日本食レストランを経営する駒形氏は、「食品の品質のレベルがまるで違う。製造工程の隅々まで目が行き届いており、品質全般に対する要求レベルが上がった。目標再設定や従業員の意識向上を図ると共に、この経験を協力者にも伝えていきたい」と意気込んだ。
モリ氏は「カステラは外来のものだが、製法を改良して趣向を凝らし、本来のものより遥かに美味しいものに昇華させたのはあっぱれ」と語り、「製造工程での僅かな違いが、最終製品の品質に影響を及ぼすことになる」と総括した。
なお、12人の研修参加者は、今年中にもパラグアイで自発的に会合を開き、ビジネス発展に向けて引き続き連携強化を図ってゆくという。