14日に出た判決を巡って、現在、最高裁が批判の矢面に立たされている。それは同裁が、「ラヴァ・ジャット(LJ)作戦のような大型汚職犯罪の場合でも、選挙に使われた隠し口座の裁判は選挙裁判所で行なう」との投票結果を下したからだ。これを「国を揺るがした大型汚職事件に対しての妨害行為だ」と、ラヴァ・ジャット管轄のパラナ州連邦警察は煽り、その輪が先週末に広がっていた。国民はそれ以前から、自身も汚職の疑いが持たれ、政治家に有利な判断を下すジウマール・メンデス判事のことなども気に入らなかった▼ここまで書くと、「そうか。ブラジルの司法は腐敗しているのか」と思われるかもしれない。だが、これが「ドラマの一段面」に過ぎないところが昨今のブラジルの悲しいところだ。では、その「最高裁に怒る人々」が抗議集会でなんと叫んだか。「最高裁を閉鎖しろ」。コラム子は開いた口が塞がらなかった▼これはすごく皮肉なことなのだが、現在、LJ作戦を支援する原動力になっているのが、こうした「司法・立法・行政」の「三権分立」も知らないような、民主主義の常識に欠けた人々だ▼最高裁が閉鎖されるとはどういうことか。それは、大統領令や、議会で決めた法案がちゃんと憲法に則ったものであるのかを判断する人がいなくなるということ。そして、そ野状態というのは、大統領が自身による独裁政治を断行しない限り起こりえない。つまり、最高裁閉鎖支持者は、意識的か無意識かを別として、大統領独裁を求めているのと同義なのだ▼そうでなくとも、ボルソナロ氏は当選する前から、「最高裁判事の数を増員したい」と語っている。それは、自分の選んだ判事が多い方が、自分の政策が進めやすくなるからだが、それを実際に行なった南米の政治家がいる。それがウゴ・チャヴェス。皮肉にも、ボルソナロ大統領自身が毎日のように批判している国の現在につながる独裁政治の礎を作った張本人だ▼もっとも、LJ班自体も、今回の件で「人のことを言えた義理か?」と批判する人が少なくないことも忘れてはならない。それは同班が、自分たちが中心となって、ペトロブラス社が米国政府などへ負った罰金を払うための、民間投資での25億レアルの汚職ファンドの提案を行なったためだ。「一介の地方の警察組織が」だ。これは国内の司法界から総スカンを食らい、味方をしていたはずのラケル・ドッジ検察庁長官にまで強く反対された。さらに、ラヴァ・ジャット作戦で苦しい立場に追われた労働者党(PT)や民主社会党(PSDB)の関係者、支持者からも批判の声があがっていた▼さらに、前述の裁判の1週間前にも、LJ班の検察官のひとりが報道サイトに「最高裁はクーデターを起こそうとしている」と発言。これが、ディアズ・トフォリ最高裁長官を激怒させ、冒頭の結果の遠因にもなっていた▼コラム子はこの流れを裁判の事前に知り、「随分思い上がった態度だな」と思った。だから裁判結果も「自業自得なところもあるのでは」と思ったまでだった▼ただでさえラヴァ・ジャットは、パラナ州連邦地裁の担当判事だったセルジオ・モロ氏がボルソナロ政権の法相を、これまで行なってきた発言を裏切る形で引き受けたことで政治的中立性が失われ、国民からの信用度が落ちていた。モロ氏の後任判事にも不安がある。そこに加えてLJ班の「増長」を疑われるような態度だ▼「LJはブラジルを洗浄してきた」と人は言う。たしかに、既存の政党の汚職政治家は多く取り締まった。だが、その一方で、暴力的で独裁的な傾向の強い、政治家実績のない人たちに数多く政治権力を与える現実も導いた。それが「司法も疑え」となってしまったら、ただのアナーキズムでしかない。(陽)