ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)とロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)の対立がこの週末で深まり、社会保障制度改革成立にさらに暗雲が立ち込めてきている。23~25日付現地紙が報じている。
マイア議長がボルソナロ氏次男のカルロス氏の発言に激怒し、「議会での調整役をやらない」と発言した件は23日付本紙で伝えたが、23日付エスタード紙での取材でのマイア氏はトーンをやや落とし、「今の連邦政府にはアイデアが枯渇している」との発言を行っている。
それ以前に、マイア氏はセルジオ・モロ法相から汚職防止法案の審議を急ぐよう圧力を受け、社会保障制度改革を最優先することで連邦政府と合意が出来ていたはずと苦言を呈した上、現法相が提出した法案は「(テメル政権の法相で現最高裁判事の)アレッシャンドレ・デ・モラエス氏の提案をコピーして貼り付けただけ」と酷評。さらに、これをマルセロ・フレイショ下議(社会主義自由党・PSOL)とPSL、労働者党(PT)の議員に審査してもらうと語っていた。
フレイショ氏は昨年3月に射殺された同党のリオ市議、マリエーレ・フランコ氏の暗殺の背景として囁かれているリオのミリシア(民兵組織)への対策がモロ法相の提案では弱いと語っている。
マイア氏はさらに、「ブラジルはツイッターから抜け出し、現実の生活に戻るべきだ」とも述べている。
すると同日、ボルソナロ大統領は滞在先のチリでマイア議長を「(政党連立に頼る)古い政治の実践者」と批判し、「まあ、義父の逮捕で、気が立っていたのだろうから許す」と発言した。
義父とは、マイア氏の義母(妻の母)の現在の結婚相手で、前政権でも閣僚を歴任、21日にテメル前大統領と共に逮捕されたモレイラ・フランコ氏(民主運動・MDB)をさす。モレイラ氏の逮捕を命じたリオ地裁のマルセロ・ブレッタス判事は親ボルソナロ派として知られ、リオ州のラヴァ・ジャット作戦担当判事でもあるため、モレイラ氏逮捕は、モロ法相の提案へのマイア氏の酷評に立腹しての報復だったのでは、との憶測も流れているほどだ。
また大統領は、「社会保障制度改革の行方は連邦政府ではなく、連邦議会にかかっている」とも語った。
だが、マイア議長の欲求不満に、DEM、進歩党(PP)、社会民主党(PSD)、共和党(PR)、ブラジル共和党(PRB)が同調。連邦政府へ反抗する姿勢も見せはじめている。
その背景には、DEMのキム・カタギリ下議が「PSLは議長選で社会保障制度改革のためにマイア氏を推しておきながら、今になって“古い政治の実践者”と言い出した。まるで一貫性がない」とツイッター上で批判したことなどがある。この批判は、議会の連邦政府リーダー、ジョイセ・ハッセルマン下議(PSL)との激しい口論にもつながった。