【既報関連】チリ首都サンティアゴで22日、混乱の度を深めるベネズエラ情勢についての対策を話し合う、南米諸国首脳会議が開催された。
23日付ブラジル紙によると、同会議には議長国チリの他、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ボリビア、ギアナ、スリナムの11カ国が参加した。だが、マドゥーロ独裁体制が非難されているベネズエラは招待されなかった。
会議では、機能停止に陥っている南米諸国連合(ウナスル)に代わり、右派政権諸国中心の新組織プロスルが立ち上げられた。会議参加11カ国の内、ボリビア、ウルグアイ、スリナムを除く8カ国がプロスル参加議定書に署名した。
ボルソナロ大統領に同行した三男のエドゥアルド下議は22日、チリの新聞のインタビューに答え、「平和的手段だけではマドゥーロ退陣は果たせない。いつかは何らかの軍事介入が必要になるだろう」と発言した。
だが、同下議はその直後、「トランプ米大統領の声を代弁したもので、ブラジルとしては、軍事介入は考えていない」と発言。ボルソナロ大統領もその後、改めて「軍事介入を支持しない」と語った。
だが、翌24日、ロシア空軍機2機が、ベネズエラの首都カラカスから北に20キロのシモン・ボリバル国際空港に降り立った。空軍機からは、100人規模のロシア軍兵士と、35トンの軍事物資が降ろされた。
反マドゥーロ体制の新同盟結成の翌日、ベネズエラに兵士と物資を送るというのは極めて挑発的な行動だが、プーチン政権に近い筋のサイトは、「この行動には何も“ミステリー”はなく、ロシアとベネズエラが数年前結んだ政府間協定に則ったもの」と報じている。
また、会議前日の21日にブラジルのオニキス・ロレンゾーニ官房長官が、1973~90年のチリの軍事独裁体制を評し、「ピノチェトの時代、チリでは多くの人命が失われた。悲しい事だ。しかし、軍事政権はその後の経済的発展の礎になった」と発言し、チリの世論に火をつけた。
チリのピニェラ大統領は企業家出身の右派だが、ピノチェト体制と同一視される事を極度に嫌っている。チリ人政治学者パトリシオ・ナヴィア氏は、「ピニェラ大統領にとって、過去の軍事独裁を賞賛される事は快いものではない。チリ右派は、ピノチェトの亡霊から逃れるのに苦労してきた」と語る。
チリの上下両院議長(共に野党、左派)は、ピニェラ大統領からのボルソナロ大統領歓迎昼食会への招待を拒絶した。チリ議会内には「ボルソナロ大統領を、外交的に好ましからざる人物(ペルソナ・ノン・グラータ)に認定すべき」との動きさえある。
ピニェラ大統領も地元メディアに対し、「ブラジル側のピノチェト体制賞賛は極めて不幸な事だ。同件についてはボルソナロ氏と立場を共有していない」と明言した。