ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》第2地域裁判事がテメル前大統領らを釈放=勾留の正当性を認めず=前倒しで人身保護令を適用=取調べは継続、口座も凍結

《ブラジル》第2地域裁判事がテメル前大統領らを釈放=勾留の正当性を認めず=前倒しで人身保護令を適用=取調べは継続、口座も凍結

テメル前大統領(Isac Nobrega)

 【既報関連】リオ州のアングラ・トレス原子力発電所建設事業に関する収賄容疑などで、21日に逮捕されたミシェル・テメル前大統領(民主運動・MDB)が、25日に人身保護令適用により釈放されたと、25、26日付現地各紙・サイトが報じた。

 前大統領の釈放を決めたのは、連邦第2地域裁(TRF―2)のアントニオ・イヴァン・アチエ判事だ。前大統領と同じ容疑で逮捕されていた、モレイラ・フランコ元リオ州知事、元軍警のジョアン・バチスタ・リマ・フィーリョ氏ら6人も同時に釈放された。

 前大統領たちには、原子力発電所の建設事業契約に絡むカルテル、贈収賄、資金洗浄、公共事業入札詐欺などの容疑がかけられている。

 テメル氏らの逮捕は、「嫌疑あり、証拠も充分。さらなる捜査が必要だが、証拠隠滅の可能性もあり、『期限を決めずに身柄を拘束』(prisao preventiva)しての取調べを望む」という、連邦検察側の要請を受けたものだ。

 この要請をリオ州連邦地裁のマルセロ・ブレッタス判事が認め、逮捕となったが、「逮捕の根拠が不充分」として弁護側が出した人身保護令を、地域裁判事のアチエ氏が認めた。よって、テメル前大統領らの取調べはこれからも続く。

 釈放命令を出したアチエ判事は、22日に「人身保護令の審理は27日に第1小法廷で」と決めていたが、「週末(23~24日)に精査した。27日まで待つ必要はない」として、前倒し釈放となった。

 「前大統領は、アングラ・トレス関連以外にも過去40年にわたって汚職に手を染めており、受け取った賄賂総額は18億レアル」と発表していた検察は、釈放取り消しを求める意向だ。

 アチエ判事は、「アングラ・トレス建設関連事件は5年前と古い(身柄拘束は事件が最近である事が条件)」、「容疑者たちが社会秩序に危機を及ぼし、捜査を妨害する可能性はない」、「逮捕を認めたブレッタス判事の書面には『~と思われる(推測される)』という言葉が多く出ている」などを、釈放を認めた根拠として挙げた。

 テメル前大統領は、午後6時40分にリオ市の連警本部を後にし、午後9時43分にサンパウロ市の自宅に到着した。また、ニテロイの軍警拘置所に勾留されていたモレイラ・フランコ氏ら6人も釈放された。

 なお、ブレッタス判事による、6260万レアルの資産差し押さえ要請を受け、中銀はテメル前大統領の持つ三つの口座総額820万レアルを凍結した。中銀は、モレイラ・フランコ氏の口座210万レアル分と、ジョアン・バチスタ・リマ・フィーリョ氏夫妻が所有する三つの会社の口座総計2320万レアル分も凍結した。

 なお、金融活動管理審議会によると、リマ夫妻の会社は18年6月から今年1月の7カ月間で1500万レアルを動かしており、検察はテメル氏を中心とするグループに絡む金が最近まで動いていた証拠と見ている。