ボルソナロ政権が最優先課題としている社会保障制度改革の憲法改正案(PEC)の審議は難航しているのに、政府の権限を抑制するPECは簡単に下院を通ってしまった。26日の下院では、「予算に計上された議員割当金による事業経費や各種の投資は予算年に支払うことを義務付ける」とするPECを、1回目の投票では賛成448、反対3、2回目の投票では賛成453、反対6の大差で承認したと、27日付現地各紙が報じた。
執行を先送りできない予算は、強制予算(orçamento impositivo)と呼ばれる。今回承認されたPECは、「議員割当金や各種の投資も強制予算に含む」と定めた。
これにより、政府が執行を先送りできる予算は、全体の7%から3%に減った。政府が議員割当金の予算執行の時期を決める権限を持つ事は、議員に対して優位に立って交渉を進める条件だった。それを失った事は政府にとっては大痛手だ。
強制予算関連のPECは、15年から審議が止まっており、26日も当日の朝まで下院での議題に上っていなかった。しかし、ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)との不仲がささやかれるロドリゴ・マイア議長(民主党・DEM)が急遽議題に加え、定数513のほぼ9割の賛成票が集った。賛成議員には、大統領が所属するPSLの議員も混じっている。
社会保障制度改革案のPECが、「定数の6割以上(308票)の賛成を2回」という条件を満たすのに苦労を強いられているのとは対照的だ。
初回投票から再投票までが1時間たらずというのは異例だが、マイア議長は、「大統領へのあてつけなんかではない。ただ、議会(立法)は、政府(行政)から独立しているという、当たりまえの事実を示したに過ぎない」と答えた。
下院が承認したPECは、上院審議に移る。上院でも定数81の6割以上(49票)の賛成が2回必要だが、ダヴィ・アルコルンブレ議長(DEM)も承認に前向きだ。
議会では、先日発表された大統領令(米国、カナダ、豪州、日本人には、観光、短期商用、文化・スポーツ関連の目的での90日間のビザ取得義務免除)棄却の動きも出ている。ランドルフ・ロドリゲス上議(持続ネット・Rede)はすでに、9政党の上院リーダーから「ビザ免除反対」の署名を集めた。9政党の合計議席は41に達しており、来週にも緊急動議を提出できる。
また、現政権の最優先課題である社会保障制度改革に関しては、ゲデス経済相が26日、予定されていた憲政委員会(CCJ)出席を急遽取りやめるという事態が起こった。同相は「報告官が決まらない状況下での出席は好ましくない」と理由をつけ、社会保障問題担当特別局長ロジェリオ・マリーニョ氏を代理として送ったが、出席議員は全く相手にしなかった。
CCJ出席議員らは、「ゲデスは逃げた」「ツイッターで議論するのか」などというプラカードを掲げ、非難した。