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無意識の内に殺傷事故に繋がる怖さ

 浜辺に打ち上げられた鯨の死体の胃の中から20数キロのプラスチックごみが出てきたとの報道を、TVで見た▼プラスチックごみは世界的な問題で、プラスチック製のストローなどの使用を制限する国や自治体も増えている。世界的な動物愛護の非政府団体が調査したところ、海洋のプラスチックごみの10%は漁で使う網や釣り糸などとの報道もあった。釣り針や浮きなども含む漁に絡んだ海洋ごみは、ブラジルだけで年580キロ、世界中では80万トンに及ぶという。釣り針やプラスチックごみが海洋動物の命を脅かしているという事実にも、改めて背筋が凍る思いをした▼他方、ガラスを砕いて粉状にして糊を混ぜたものを塗った凧糸で、バイク運転手などが負傷したり死んだりする事故が繰り返されている事も思い出した。自分の凧は糸が切られ難くなるし、相手の凧の糸も切れるため、凧揚げをする人が増える冬場などはそれに伴う事故が増える。ガラスの粉を塗った糸がからみつき、片足を失った鳥の姿が報じられる事もある。隣人は地面に落ちていた糸を車輪に巻きこんだ車が横を走り抜けた際、アキレス腱を切る大ケガを負った▼本人達は楽しんだりしているだけだが、結果的に殺傷事故に繋がるという意味では、釣り針などを海洋に放置する事と、凧糸にガラスの粉を塗る行為は大差がない。責任の所在を突き止められない点や、本人達に殺傷行為に繋がるという自覚がない点も共通する▼他者を傷付け、自殺願望や復讐心も生じさせかねない言葉や態度同様、無意識の内に殺傷事故を起こすものが身近な所にある事や、その事に気づかずに日々を過ごしているという事実が、ますます心を重くした。 (み)