【既報関連】社会保障制度改革に伴う憲法改正案(PEC)を審議する下院の憲政委員会(CCJ)に3日、パウロ・ゲデス経済相が出席した。同経済相への質疑は、野党議員たちとの激しい口論になって中断、最後は護衛に囲まれて会場を後にしたと、3、4日付伯字各紙、サイトが報じた。
この日、最も注目を集めたのは、ゼカ・ジルセウ下議(労働者党・PT)が、「年金生活者、高齢者、農家、教師には虎の如く冷徹なのに、特権階級には媚びるお嬢さん(チュチュッカ)」と皮肉った事に、ゲデス経済相が激怒し、「チュチュッカとはなんだ。最低限の敬意を払え」と返した光景だった。
社会保障制度改革に反対する野党勢力は、質疑の始まる2時間前から委員会の前列を抑えていたのに対し、本来多数派で政府方針を支持する政党所属の議員たちの段取りは悪く、質疑は開始早々から、ゲデス経済相への集中砲火と化した。大臣擁護、社会保障制度擁護の質問が出始めたのは、開会から5時間が経過した後だった。
質疑終盤に会場内の熱気が高まったのを見たゲデス経済相は、折を見て中座。護衛に囲まれながら退出せざるを得ない状況になった。
混乱を伝え聞いたロドリゴ・マイア議長(民主党・DEM)は、「質疑の場で大臣を『媚びへつらうお嬢さん』と呼んだりするのはあまりにも非常識だ。大臣は敬意を持って話していた」と語り、野党議員による「これで社会保障制度改革も終わった」発言に対しても、「そんな事はない。進んでいく」とはねつけた。同議長は、「PSLや政府側のリーダーたちの戦術もよくなかった。与野党の議員を順番に質問させれば大臣が集中攻撃に遭わずに済んだ」とも語っている。
政府案PECの中では特に、カピタリザソンと呼ばれる、「労働者各自が口座を持ち、そこに積み立てた金額の大小、積立期間、運用成績に応じて受給額が変動する」とした項目への批判が強かった。現行制度(レパルチソン)は、受給条件さえ満たせば、規定の年金が受け取れるというものだ。カピタリザソンは、個人の責任が厳しく問われるのに対し、レパルチソンは、受給条件を満たす事だけが重視され、受給額も、少なくとも基準値(=法定最低賃)は一律と、やや社会主義的だ。
「チリほど厳しく自己責任を問われるような制度にはしない」と語るゲデス経済相はカピタリザソンに執心で、徐々にレパルチソンと入れ替えていく事も望んでいる。
ただし、すでに与党議員の間では、低所得の高齢者、身障者などへの特別恩給(BPC)と、農村年金の受給条件を厳しくし、受け取り額も少なくした条文の変更、撤回は止むを得ないとの発言が出ている。
翌4日のCCJでは、法学者による政府案の分析結果が公表された。