米国に本部を置く国際的な人権NGO(非政府団体)のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が4日、ベネズエラの保健医療は崩壊状態で、同国は非常に深刻かつ複雑な人道危機の最中との見解を表明。国連にも、ニコラス・マドゥーロ政権に「強い対応」をとるよう求めたと4日付ブラジル国内サイトが報じた。
HRWの原則は「調べる、知らせる、世界を変える」で、世界90カ国に人権侵害に関する調査員を派遣。党派性を持たず、被害者や加害者を直接調査してまとめた報告書は、客観的かつ徹底している。それを広範囲に報道して国際社会の注目を惹きつける事で、当事者の国や組織に圧力を加え、人権侵害を控えるよう仕向けている。
そんなHRWが、ベネズエラの人権状況は非常に深刻で複雑だというのだ。主な問題点は、新生児や幼児の死亡率の悪化、麻疹(はしか)やジフテリアなど、予防接種で防げる病気の蔓延、マラリアや結核などの感染症患者増加、食糧危機、栄養失調児増加などだ。
麻疹のデータは汎米保健機構のもので、2017年6月以降、6200人以上の患者を確認と報告。主食の食糧の供給さえ不足している現状が、公共衛生事業の崩壊に輪をかけているという。
3月28日付の国連の報告によれば、同国民の60%は極貧者で、貧困者も入れると国民の94%に達する。また、3169万の総人口の内、370万人が栄養失調状態で、5歳未満の子供の22%は慢性化しているという。
HRWは国連に、同国への人道支援を優先するよう要請。ベネズエラにも、医療衛生や食糧供給に関する詳細な情報へのアクセスを認めるよう求めた。
コロンビアやブラジルなどは、同国への人道支援物資(食糧、薬、個人衛生用品など)を集積しているが、マドゥーロ氏が国境を封鎖したため、持ち込めずにいる。
ただ、マドゥーロ氏は3月29日に国際赤十字に支援物資配送許可を与えた。また、マドゥーロ政権支持を表明しているロシアや中国も支援物資を搬入しているが、広域停電頻発で水道も機能しないなど、日常生活での困難は拡大している。
HRWは、ブラジル北部のロライマ州での麻疹患者急増にも言及。今年2月までに確認された同州での麻疹患者の61%はベネズエラ人だという。また、2018年に同州にいるベネズエラ人の間で発生したエイズ患者は56人で、それまでの3倍以上となった。ベネズエラ人は体力や免疫能力が低く、生存率はブラジル人患者のそれを大幅に下回るという。