世界銀行(本部:米国ワシントン、以後「世銀」)は4日、グローバル経済が及ぼすラテン・アメリカ諸国の社会指標への影響を発表した。それによると、ブラジルでは、2014年~17年に貧困層が人口全体の17・9%から21%に増大したと、5日付ブラジル各紙が報じた。
貧困層の定義は、「日収5・5ドル以下で暮らす人」で、ブラジルでの実数は、3650万人から4400万人へと750万人増えた。4日の為替相場(1ドル=3・85レアル)でみれば、5・5ドルは21・2レで、月収換算では636レだ。
世銀は、日収1・9ドル(7・3レアル)以下の「極貧層」のデータも取っている。ブラジルの極貧層は同期間中に、560万人から1010万人にと450万人(80%)増加。貧困層に占める割合も、15・4%から23%に拡大した。
世銀は「ラテン・アメリカ諸国は世界経済の景気変動に左右されやすいコモディティ輸出に頼っているから、貧困層にしわ寄せが行きやすい」と警告している。ブラジルでは2003年~13年に貧困層が半分以下になったが、世銀は、その当時はコモディディ輸出が好調だった事が原因と見ている。
ブラジルではこの期間中、労働者党(PT)政権がボルサ・ファミリアに代表される所得再配分政策を行い、それが貧困層減少につながった。だが、それは一時的な減少で、「職能を高めてより高給な職に就く」といった、構造的な貧困脱出者は少なかった。
世銀は、「ラテン・アメリカ諸国、特に南米諸国の貧困撲滅の取り組みが効果を挙げていない現状を考慮すれば、貧困率の増大は驚きではない」と評価している。ブラジルは17年時点で2億900万人の人口を抱え、ラテン・アメリカ・カリブ諸国の総人口の3分の1を占めるため、影響が大きい。
報告書には、「社会発展関連政策は、ばらまきよりも、住居、衛生、教育、医療など、基本インフラの整備を重視するべき」ともあるが、これらは好況期のPT政権が怠った部分といえる。
世銀は、今年のラテン・アメリカ諸国全体のGDP成長率予測を0・9%に下方修正した。その理由として、「地域の牽引役であるはずの、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンの3カ国の経済成長が低調または悪化している事」と、「政変の続くベネズエラが破滅的状況にある事」を挙げた。半年前の予測では、今年のラテン・アメリカ諸国のGDP成長率予測は1・6%だった。
ブラジル中銀の経済動向調査「フォーカス」最新版は、今年のGDP成長率を1・98%と予想したが、世銀の予想は2・2%と少し高めだ。
世銀のラテン・アメリカ・カリブ諸国担当副総裁のアクセル・トロセンブルグ氏は、「昨今は世界経済の強い追い風が期待できない時代だから、ラテン・アメリカ諸国が持続的かつ貧困層を置き去りにしない経済成長を達成するには、各国の必要に応じた根本改革の実施が重要だ」と語っている。