8日夜、リオ市を襲った雨は22年ぶりの豪雨となり、10人の犠牲者を出した。今回の豪雨では、土砂や倒木、車まで巻き込んで流れる濁流のすさまじさや、土砂崩れで倒壊する家屋を映す映像などに何度も息をのんだ▼特に衝撃的だったのは、娘夫婦の旅行中、孫を預けられた女性が、女児を連れてフェスタに行き、タクシーで帰宅する途中、土砂崩れで立ち往生する間に落石も起き、運転手も含めた3人が死亡したケースだ。ショッピングセンターのカメラの映像で二人が乗ったタクシーの車種を調べ、GPSの履歴で所在地を突き止めた知人らは、消防より先に現場に着き、土砂などの撤去を始めた。現場付近では9日朝、土砂崩れがあったと知らされて逃げた人達が置き去りにした車の撤去作業が行われたが、誰も土砂の下に別の車がある事に気づかなかったのだ▼ニーマイヤー大通りを埋め、隣接する自転車専用道を破壊した土砂や樹木は大通り脇の斜面を雪崩れ落ちたものだったし、胸まで水に浸かるほどの洪水も自然の脅威のごく一部だ。クリヴェラ市長は、警戒雨量に達して警報が鳴り出す前に土砂崩れが起き、犠牲者が出たレメ区などに言及し、自然災害対策にミスがあった事を認めると共に、記録的な豪雨は地球温暖化によるものとの見解も表明した▼歴代知事が汚職で逮捕されたりしているだけに、公的な資金が底をつき、国に対する負債も山積している中で、対策費が不足している事は理解出来る。だが、粋を凝らし、技量を誇った自転車専用道が再崩落し、警報も機能しなかった事などは、自然と共生する事を忘れた事や、自然の脅威の前の人間の無力さを鮮明に見せ付けた。(み)