最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は15日、サイト「アンタゴニスタ」と同系列の雑誌「クルゾエー」が掲載したジアス・トフォリ最高裁長官に関連する報道を「虚偽の内容」と判断し、取り除くよう命じた。これに対し、「最高裁による検閲行為では」との反論も巻き起こっている。16日付現地紙が報じている。
問題となったのは、「アンタゴニスタ」「クルゾエー」が先週付で掲載した、「父の友達の友達」と題する記事だ。それによると、ラヴァ・ジャット作戦(LJ)の主要な被告で報奨付供述者の一人の建設大手オデブレヒト元社長、マルセロ・オデブレヒト氏は、連邦警察が押収したコンピューターの中のメールに出てきたコードネームの内、「父の友達の友達」はトフォリ氏をさすと説明したという。
問題のメールは2007年7月13日付で、トフォリ氏は当時、ルーラ政権で総弁護庁長官をつとめていた。このメールは、オデブレヒト社役員だったアドリアーノ・マイア氏とイリネウ・メイレレス氏宛てで、オデブレヒト氏は「父の友達の友達と話をつけたか?」と記している。そこには贈収賄工作を疑わせる金額こそ出てこないが、動詞FECHARは様々な意味を含んだ言葉だ。
オデブレヒト氏は、連邦検察庁と司法取引を行い、17年12月から自宅軟禁となった。コードネームの説明は連邦警察の要請で行われ、今月9日にクリチーバのLJ特捜班の資料に加えられたが、12日のクルゾエーの報道後に除外された。
トフォリ長官は12日に同件に関する判断をモラエス判事に託した。これを受け、モラエス判事は15日に「フェイクニュース(虚報)」と判断し、ネット上からの撤去を求めた上、命令に従わない場合は10万レアルの罰金を科すとした。
だが、LJ関連資料も閲覧したフォーリャ紙は「オデブレヒト側の弁護士のサインも入ったもので、虚報ではない」と主張。グローボ局も、「この資料は9日にLJの資料に正式に含まれた」と報ずるなど、マスコミが反論している。
モラエス判事の判断に対しては、全国新聞協会(ANJ)や全国雑誌発行者協会(ANER)、ブラジル調査報道協会(ABRAJI)、ブラジル報道協会(ABI)なども、「検閲行為にあたる」とし、抗議声明を出した。汚職撲滅運動を牽引する国際団体トランスペアレンシー・インターナショナルも、疑問を呈している。
トフォリ長官は3月中旬に、主にボルソナロ大統領支持者のワッツアップから浮上する自分や最高裁に関する虚報に対する捜査を行うよう求めていたが、今回の場合はマスコミを相手取っている点で異なる。
16日には、3月に最高裁が命じた同裁関係者に対する虚報に関する捜査の一環で、連警が家宅捜査を行った。他方、連邦検察庁は同日、最高裁が集めた捜査資料は検察による告発資料には使わない旨を明らかにした。