ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》最高裁検閲問題はモラエス判事が折れて撤回=トフォリ長官巡る問題記事=最高裁内でも強かった批判=ルーラへの取材も解禁か

《ブラジル》最高裁検閲問題はモラエス判事が折れて撤回=トフォリ長官巡る問題記事=最高裁内でも強かった批判=ルーラへの取材も解禁か

最高裁のトフォリ長官(Tania Rego/Agencia Brasil)

最高裁のトフォリ長官(Tania Rego/Agencia Brasil)

 【既報関連】最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は18日、15日に出した、サイト「オ・アンタゴニスタ」と同系列の雑誌「クルゾエー」が11日の夜掲載した、ジアス・トフォリ最高裁長官に関するラヴァ・ジャット作戦絡みの記事の掲載中止を解除した。国内外のマスコミ界や最高裁内部からも起きた批判に応えた形となった。19日付現地紙が報じている。

 17、18日付本面でも報じたが、ラヴァ・ジャット作戦の重要被告で建設大手オデブレヒト社の元社長マルセロ・オデブレヒト氏が、2007年に同社関係者宛てに送ったメールに記した「父の友達の友達」というコードネームは、当時、ルーラ政権で総弁護庁長官をつとめていたトフォリ氏のことを指していたと、「アンタゴニスタ」「クルゾエー」が11日夜報じた。問題のメールには、「父の友達の友達とはもう話をつけたか」と贈収賄工作を疑わせるような表現も行われていた。
 この件に関しては、多くの新聞や雑誌、マスコミ協会が「検閲だ」と批判声明を出していた。また、記事掲載差し止めに関しては最高裁でも反対意見が出ていた。
 最高裁最長老のセウソ・デ・メロ判事は18日、これは「不寛容な検閲だ」と発言。マルコ・アウレーリオ・メロ判事も、ラジオの取材に「猿ぐつわをはめるような行為」との表現で応じ、モラエス判事の判断撤回を求めていた。
 記事掲載差し止めは、トフォリ長官が3月に最高裁や同裁判事への中傷や虚報(フェイクニュース)に対する捜査開始を、連邦検察庁の意見書さえ求めずに決めたことなどへの批判が重なる中で起きた。
 モラエス判事は検察庁に問題の記事の根拠となる書類の有無を確認後、掲載差し止めを決めた。肝心の書類が検察庁へ送られたのは同判事への返答後だったため、虚報との判断となったが、その書類はその後、検察庁に送られ、虚報ではなかったことが明らかになったため、余分な衝突や攻撃回避のために掲載中止取消となった。だが、虚報関連の捜査は継続する。
 トフォリ判事は経済紙ヴァロールのインタビューに、「アンタゴニスタのグループがあの記事を利用して、最高裁が予定していた“二審判決後の即時の刑執行”に対する審理に圧力をかけようとしたように思えた」と答えた。だが、同件の審理は10日の予定が延期されており、11日掲載の記事と審理との関係は不明瞭だ。
 一方、連邦検察庁は16日、極秘事項扱いのオデブレヒト氏の証言が報道されたことに関連した捜査を開始。「我々は漏洩なぞしていない」として、疑いを否定した。
 また、モラエス判事の掲載中止解除の会見と同時に、「掲載により大統領選に左右しかねない」との理由で昨年9月にルイス・バローゾ判事が出した、フォーリャ紙によるルーラ元大統領への取材禁止措置をトフォリ長官が取り消した。