ジェトゥリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(FGV/Ibre)の発表によると、今年第1四半期の平均稼働率が調査開始以来の平均値を上回ったのは、製造業15部門中3部門だけだったことが分かった。22日付現地紙・ニュースサイトが報じている。
調査では、各部門が工場、機械、倉庫などに投資し、それらが十全に稼働した想定値と現状を比較した。本来の生産力は高いのに、需要停滞などから、多くの部門では施設が活用されていない実情が浮き彫りになった。
調査責任者のアロイジオ・カンペロ氏は、「まだまだ活用されていない力が眠っている。これらは経済の停滞が原因。現状では、新規投資の必要さえない」と語る。
製造業全体の稼働率は74・6%で、調査開始以来の平均値81・0%を6%ポイント以上下回る。
第1四半期と、調査開始以来後の平均値の差が最も大きかったのは資本財(10・1%ポイント)で、以下、中間財(6・1%ポイント)、耐久財(4・7ポイント)と続く。
2014年半ばに始まった大型不況は16年末で終了し、2017年からの経済成長率はプラスに転じ始めた。
しかし、その後の成長ペースは思わしくない。地元紙は「潮目の変化は昨年中盤ごろ」としている。トラックストや、アルゼンチンの通貨危機、昨年半ば頃には、10月の選挙で、(市場関係者からは嫌われていた)労働党(PT)勝利の可能性もささやかれていたことによる不安感を要因に挙げている。
全国工業連合(CNI)の政治経済部門長フラヴィオ・カステロ・ブランコ氏も、「工業界は昨年7月から低調だ」と語っている。CNIは、今年の工業部門限定のGDP成長率予測を、3・3%から1・1%に下方修正した。工業部門限定GDPは、17年がマイナス0・5%、18年は0・6%だった。
ブランコ氏は、「ブラジルは形式上の不況からは脱したが、失業率が高く、需要が高まらないため、工業界は低調」と説明。ボルソナロ新政権が狙う社会保障制度改革の進行が遅いことにも、「政界の動きは、もう猶予がない経済界の状況に追いついてない」と語る。
例外的に稼働率が平均を上回っているのは、紙パルプ業界と衣服業界、医薬品業界だ。紙パルプは好調な輸出に支えられ、医薬品は景気の波に左右されにくいことが原因だ。
なお、22日朝、ブラジル中銀が発表した今年のGDP成長率予測は、先週発表の1・95%が1・71%へと下方修正された。同日はFGV/Ibreが、4月の工業界の信頼感指数が97・6ポイントだったことも発表した。これは前月比0・4ポイント高だが、依然、「見通し楽観」といえる100ポイントを下回っている。