ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》1人当たりのGDP回復せず=1%成長では人口増で帳消し=消費冷えればGDPにも悪影響

《ブラジル》1人当たりのGDP回復せず=1%成長では人口増で帳消し=消費冷えればGDPにも悪影響

統計上の不況は終わったが、国民の生活は一向に楽になっていない(参考画像・Agencia Brasil)

統計上の不況は終わったが、国民の生活は一向に楽になっていない(参考画像・Agencia Brasil)

 近年の大型不況(景気後退)は統計上、2014年半ばに始まり、2016年末で終了したが、国民1人当たりの国内総生産(GDP)は年間3万2千レアルで、不況前の水準より9%も低い。
 国民1人当たりのGDPが前期比マイナスになって既にほぼ5年、19四半期が経過した。
 景気後退はこれまでも複数回起きたが、「国民1人当たりのGDPが不況前の水準に戻るための期間」は、「14/16年の不況からの回復期」が最も長くなってしまう可能性があると、25日付現地紙が報じた。
 この理論は、ジェトゥリオ・ヴァルガス財団所属の経済学者たちで構成される経済サイクルデータ分析委員会(Codace)の記録に基づいて展開されている。
 「国民1人当たりのGDP」は、「教育年数」や「平均寿命」などとともに、国連が刊行する人間開発指数(HDI)の算出に使われる重要な指標だ。
 2017年と18年のブラジルのGDP成長率は、それぞれ、1・0%と1・1%だが、人口もほぼ同じペースで増えているため、1人当たりのGDPは増えていない。
 「国民1人当たりのGDP年間3万2千レアル」を「国民が1カ月に稼ぐ金額」に置き換えると、2666レアルだ。
 回復に21四半期を要した1989年不況の回復のペースは、現状よりも速かった。仮にその時と同じペースで回復していたとすると、今の「国民1人当たりの年間GDP」は3万3千レアルでで、今より年間1千レアル高く、月収換算では2750レアルだ。(インフレや、レアルプラン効果の調整済み概算)
 国民1人当たり84レアルも月収が低い状況は、当然、消費を冷え込ませている。消費はGDPの60%を占めるため、なおさら、GDPも増えないという悪循環にはまり込んでいる。
 投資顧問会社ACパストーレ所属エコノミストのマルセロ・ガザーノ氏は、「14年に始まった不況が16年末に終わって以降、目だった回復は起きていない。17年第1四半期に農業部門が実質以上に伸びた以外、GDPの回復ペースは遅く、人口増加のペースにさえ追いついていない」と語った。