ブラジル音楽界に新たなトップ・スターが生まれた。男性シンガーソングライター、チアゴ・イオルキ(33)の新作アルバム「レコンストゥルソン」が、ブラジルにおける人気50曲のうち13曲を独占する事態が起きたのだ。
新アルバムは、事前予告もなく、5日に突然リリースされた。近年の曲の人気は、CDの販売数ではなく、スポティファイやアップル・ミュージックなどの配信サービスでの視聴回数で判断されるようになっているが、チアゴの新アルバムは、収録された13曲全てが、アルバム配信からわずか24時間以内で、スポティファイ・ブラジルでのトップ50に入ってしまったのだ。こうした事態が起きるのは、ブラジルでは初めてのことだった。
そのリリースのタイミングも絶妙だった。昨年1月、チアゴは時間をかけてじわじわと人気が上がってきていた矢先に、「10年間活動したので、ちょっと休みに入りたい」と無期限の活動休止を発表。ファンの心配をよそに、そこから1年間以上、音信が全くない状態が続いていた。そこに突然、ファンお待ちかねの活動再開の報が入ったのだ。
また、復活に伴うプロモーションも功を奏した。これら13の新曲向けに作られたミュージック・ビデオは、チアゴと、相手役を務める女優とのラブ・ストーリーになっており、全部をつなげると短編映画仕様になっている。
こういう手法は、「ロングヘアの甘いマスクの美男歌手」というチアゴのイメージにも合っていたということだろう。
そんなチアゴだが、芸歴は意外と長い。パラナ州カトリック大学の学生だった彼は、2008年にアルバム「レット・ユアセルフ・イン」でデビュー。大きな脚光を浴びたわけではなく、しばらく地味な活動が続いた。最初のアルバム2枚の歌詞は全曲英語だった。
だが、ポルトガル語で歌いはじめた2013年のアルバム「ゼスキ」からは、テレビのドラマなどで彼の曲が使われるようになって、徐々に人気に火がついた。
2015年のアルバム「トロッコ・ライクス」からは、「アメイ・テ・ヴェル」「アレクサンドリア」といった曲が大ヒットとなり、ヒット・チャートの新しいスターになりつつあったが、そんな矢先での活動休止、そして活動再開だった。
チアゴの存在は、2010年代に入ってからずっと、「ブラジル版カントリー」のセルタネージャと、若者に人気のダンス・ミュージックのファンキが独占していたヒット・チャートに、久々に現れた、ポップ・ロックのアーティストという意味でも注目されている。(8日付エスタード紙より)
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