ブラジルでも世界有数に加入者の多い、映像配信サービス「ネットフリックス」では今日10日から、ペトロブラス汚職を暴くラヴァ・ジャット作戦を元にしたブラジル製作の連続ドラマ「オ・メカニズモ」の第2シーズンがはじまる。このドラマが、ラヴァ・ジャットの捜査員や同事件に絡んだ政治家などが実名を変えて配役されていることで、昨年3月配信の第1シーズンでも国際的にかなりの話題を呼んでいた▼ただ、第1シーズンと第2シーズンのあいだで、皮肉なことが起こった。監督を手がけるジョゼ・パジーリャの、ラヴァ・ジャットに対しての意見が大きく変わってしまったのだ。それは、同作戦を厳しく指揮する担当判事だったセルジオ・モロ氏がボルソナロ政権の法相に就任してしまったためだ▼モロ氏のボルソナロ政権入りに関しては、コラム子も当コラムにおいて、同じく司法関係者でありながらネット上で選挙期間中にボルソナロ氏への熱烈な応援を展開したロザンジェラ夫人と共に、「司法は中立」の立場を破ったとして度々批判をしてきたのだが、それはこのドラマの監督も同じだったようだ▼パジーリャは、左派・労働者党(PT)支持者が圧倒的に多い芸能界において、「ブラジル政界浄化のため」とあえてPTに批判的な立場をとり、このドラマの制作をはじめた。その間、俳優仲間からは出演を断られることも珍しくなかった。このドラマではモロ氏は「パウロ・リゴ」の役名で描かれ、英雄的存在として扱われていた。それがパジーリャ自身が「軽蔑していた」という、ボルソナロ氏の支持を行なったことがショックだった。第1シーズンは、まだ大統領選の半年ほど前のことだった▼「もう今やボルソナロ政権の広告塔だよ。彼は味方についてしまったことを後悔するよ」とパジーリャは今年に入って、モロ氏を痛烈に批判し続けている。8日付のエスタード紙の記事の中でも彼は「ブラジルの場合、何が悪いかと言えば、《左翼》と言えばすべてイコールPT。別にルーラ(元大統領)が『資本論』を書いたわけでもないのにね。そして、それに反抗したければ全部ひとつの勢力に固まろうとして、簡単に二元論化してしまう。そうやってボルソナロ政権だって生まれてしまった」と批判している▼この見解に関してはコラム子もほとんど同じ。モロ氏がボルソナロ政権に就いたことで、パジーリャのように同氏に懐疑的になった人もかなり多い反面、「ほら、やはり正義の味方は反左翼じゃないか」とばかりに、自身のボルソナロ氏支持が肯定されたような気分になった人も同様に多いはずなのだ。そんなモロ氏は今や、ボルソナロ政権が、まるでカルト宗教家のような影響力を持ちつつある思想家オラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏や、大統領自身の息子たちのスキャンダルなどで支持率を落としつつある中、「品質保証の最後の砦」的な役割さえ担うようになっている▼そんな状態の中、「メカニズモ」の第2シーズンでのモロならぬリゴ判事の役柄もかなり変わっているという。それが、「国民からの圧倒的な支持を受け、政界転進を考えるようになる」というのだから、何とも皮肉だ。(陽)